モカブラウンの鍵【完結】
「乾杯! ああ~、美味しい」


佐伯さんが友だちとよく行く居酒屋で飲むことになり来たのが、居酒屋『秋水(しゅうすい)』。

俺はワインバーやカジュアルフレンチを出すような居酒屋にでも連れて行かれるのかと思っていた。

それが普通の居酒屋。

店名がオシャレだとは思うけど。

飲みに来ている人も男ばかり。

壁に書いてあるメニューを見ると、モツの煮込み、肉じゃが、枝豆、軟骨の唐揚げ、いかげそ、ほっけ、アジフライなど。

どう見ても女性をターゲット層に入れていない。

こういう所の方が気楽だし、落ち着くからいいけど。

あっ、佐伯さんって、味覚がおやじだったんだよな。

忘れてた。

ビールジョッキを口につけ、豪快に飲み干す佐伯さんを眺めていた。


「杉山、ほら飲みなよ」

「ああ、はい」


腹も減って、喉も乾いていた俺は、佐伯さんに習って喉を鳴らしながら飲んだ。

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