モカブラウンの鍵【完結】
「誰かを好きになるなら、杉山みたいな人がいい」

「俺ぐらいのレベルなら、どこにでも居ますよ」


内心、勘違いしてしまいそうだった。

もし、佐伯さんに告白でもされたら、このまま抱いてしまうと思う。

それぐらい魅力的で魅惑的だった。

仮にそういう展開になっても、後悔しないと確信している自分がいた。

癒えていない痛みが佐伯さんにはある。

それを取り除いてあげたい。

それがもし無理なら、少しでも楽にさせてあげたい。

頭の中や感情の中に、佐伯さんが増えていくのを感じた。

佐伯さんの左手がワイシャツを掴む。


「もう少し、ここにいて」

「いいですよ」


ワイシャツも手も離す気配がない。

そのままベッドに横になると、佐伯さんは体を少しずらし、俺のためのスペースを開けてくれた。

シングルベッドだと、お互いの顔がすごく近くなる。


「寝ていいですよ。何もしませんから」

「私って、魅力ない?」

「それって、誘ってます?」

「ち、違う」


顔を赤くしてすごい勢いで顔を振っていた。

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