モカブラウンの鍵【完結】
強引さよりやさしさ
「キャー!」


突然、どこからか転げ落ちた。

そして、何か硬い複数の棒が背中に当たった。


「痛てっ」


またかよ。

背中を摩りながら床にあぐらをかく。

佐伯さんを見ると、顔が真っ赤だった。


「おはようございます、佐伯さん」

「おっ、おはよう」とぎこちない感じで言うと、俺の方をじっと見ている。

「気分はどうですか?」

「大丈夫でし」


あっ、噛んだ。でしって。

かわいすぎだから。

笑っても失礼かなと思って、一応笑いを堪えてみる。


「笑いたければ笑えばいいじゃない」

「すみません。昨日の記憶ありますか?」

「所々。私、もう少しここにいてとは言ったけど、泊まってとは言ってないんですけど」

「俺だって、泊まるつもりはありませんでしたよ。佐伯さんがワイシャツをがっしり握っていたんで、動けなかったんですよ。不可抗力ですから。あ、何もしてませんから」

「わかってるわよ」


背中を摩りながら立ち上がり、後ろにあるパーティションを見た。

< 71 / 300 >

この作品をシェア

pagetop