モカブラウンの鍵【完結】
「何してるの?」
「いや、さっき勢いよくぶつかったんで、傾いてないかと思って。これって天井と床で突っ張るタイプでしょ?」
パーティションに対して垂直に立ち、斜めになっていないか、上と下にあるネジが緩んでないかを確認した。
ステンレスのパイプと木目の化粧板で作られているパーティションは思いの外丈夫で、特におかしいところはなかった。
「もしかして、私が突き飛ばしたせいでぶつかったの?」
「ああ、まあ、そんな感じです」
「ごめん」
「いいですよ。慣れました」
佐伯さんの体調も問題ないみたいだし、ここに俺がいる理由はないよな。
佐伯さんにとっては。
「じゃあ、俺、帰ります」
ジャケットやカバンを手に持ったとき「待って」と声を掛けられた。
振り向くと布団カバーを弄りながらこっちを見ている。
「朝ごはん、食べていかない?」
「えっ」
「いや?」
服をちゃんと着ているとは言え、そこベッドだし。
上目遣いは反則でしょ。
「そんなことないです。うれしいです」
「よかった。すぐ作るから」
ベッドから下りた佐伯さんは「テレビでも見てて」と言って、洗面所へ向かった。
「いや、さっき勢いよくぶつかったんで、傾いてないかと思って。これって天井と床で突っ張るタイプでしょ?」
パーティションに対して垂直に立ち、斜めになっていないか、上と下にあるネジが緩んでないかを確認した。
ステンレスのパイプと木目の化粧板で作られているパーティションは思いの外丈夫で、特におかしいところはなかった。
「もしかして、私が突き飛ばしたせいでぶつかったの?」
「ああ、まあ、そんな感じです」
「ごめん」
「いいですよ。慣れました」
佐伯さんの体調も問題ないみたいだし、ここに俺がいる理由はないよな。
佐伯さんにとっては。
「じゃあ、俺、帰ります」
ジャケットやカバンを手に持ったとき「待って」と声を掛けられた。
振り向くと布団カバーを弄りながらこっちを見ている。
「朝ごはん、食べていかない?」
「えっ」
「いや?」
服をちゃんと着ているとは言え、そこベッドだし。
上目遣いは反則でしょ。
「そんなことないです。うれしいです」
「よかった。すぐ作るから」
ベッドから下りた佐伯さんは「テレビでも見てて」と言って、洗面所へ向かった。