モカブラウンの鍵【完結】
洗面所を出ると、カウンターキッチンから鼻歌が聞こえてきた。

何の曲だ? 聞いたことある。

CMで聞いたような気がするな。

あとで聞いてみよう。


リビングに行き、ソファに腰を下ろす。

外したネクタイをカバンに突っ込んだ。

ついでに携帯取り出して、メールと電話の確認をする。

メールが1件か。


【佐伯とはどうだ? いい加減、どうにかしろ。  松下】


松下さん、この意味深メールは何ですか?

やっぱり、松下さんは地獄耳だ。

佐伯さんとの会話は、松下さんが事務所を出る瞬間だったはず。


怖っ。


何と言うか、俺、そんなにバレバレだったのかな。

もしかして、あの飲みに連れて行ったくれたときから気づいていたのかも。

あの時は自覚してなかったけどさ。

そう考えれば、あの時言っていたことも納得できるし。

心配している松下さんには悪けれど、ごまかすか。

無理矢理、佐伯さんとくっつけようとはしないと思うけど、また飲みに連れて行かれて、詮索されたら困る。


【普通に飲んで帰りましたよ。 杉山】


「ごはん、できたよ」


メールを送信すると、佐伯さんがカウンターキッチンから言った。


「はい」

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