モカブラウンの鍵【完結】
カウンターには旅館のような朝食が並んでいた。

白飯、豆腐とわかめのみそ汁、鮭の塩焼き、厚焼き玉子。


「美味そう」

「お口に合えばいいのだけど」


スツールに座った俺の隣に、佐伯さんも座る。

向かい合わせとかじゃなくてよかった。

絶対、じっと見ちゃいそうだし。


「じゃあ、食べましょう」

佐伯さんの言葉に「はい。いただきます」と言って、お箸を持った。

その様子を見ていた佐伯さんも「うん。いただきます」言い、ご飯を食べ始めた。


みそ汁を一口飲む。

だしが効いていて美味い。

赤みそってのが、いいよな。

うあ、玉子焼きはふわふわだし。


「佐伯さん、すごく美味しいですよ」

「本当? よかった。遠慮しないで食べてね。ご飯、お替りもあるから」

「ありがとうございます。短時間でこれだけ作れるなんて、料理好きなんですか?」

「うん。学生の頃から好きで。部活も調理部に入っていたの」

「へえ。姉ちゃんも佐伯さんを見習うべきだよ。姉は料理っていうか、家事全般が苦手で、一緒に住んでいる頃は俺が全部やってたんですよ。もう、嫁に行けたのが不思議です」


鮭の塩焼きを食べながら話していると、佐伯さんは横で笑っていた。

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