モカブラウンの鍵【完結】
エレベータに乗り、1のボタンを押す。

狭いエレベータは低音を響かせながら動き出した。

エレベータが1階につき、ドアが開くのと同時に男が入って来た。

俺の肩に体をぶつけながら。

普通、降りる人の方が先だろ。

それに謝るだろ。

男の顔を見たくてドアの方を見た。

男は30代前半くらいで、ダークグレーに細いラインが入ったスーツを着ていて、どこにでもいるような男だった。


大人なんだからモラルは守ってほしよ。

エレベータホールからポストが備え付けられているエントランスホールへ向かって歩く。

コートのポケットに手を突っ込んだとき、あるはずのものがなかった。

あ、携帯。メール送ったあと、テーブルに置いたままできちゃったよ。

もう一度、戻らないと。


エレベータホールへ引き返して、ボタンを押す。

さっきの男を乗せたエレベータは5階に停まっていた。

下りてきたエレベータに乗り、5階のボタンを押す。


まだ、寝てたりしないよな。

ああ、でも風呂とか入っている場合もあるよな。

もし、インターフォンを押してもダメだったら、ポストからメモでも入れておくか。

緊急の連絡もないだろうし、土日は特に予定もないし、仮に携帯がなくても問題ないな。

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