モカブラウンの鍵【完結】
――ピンポーン、ピンポーン

ドアの前で、佐伯さんが出てくるのを待ってみる。

少し経ってもドアが開く気配がなくて、もう一度、インターフォンを押して見る。


だめか。


カバンから手帳を出して、携帯のことを書こうとした時だった。

ドアの内側からガンという、何か硬い音が聞こえた。

そして絞り出すような女の人の声も微かに聞こえる。


佐伯さん?


胸騒ぎがして、ドアノブに手を掛け、押してみた。


鍵が掛かってない。


勢いよくドアを開けた。

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