モカブラウンの鍵【完結】
「お前、ナオの新しい彼氏?」
玄関の方を見ると、痛みが治まったみたいで、男はゆっくり立ち上がった。
さっき殴ったとき、口を切ったみたいで、男の口の左端から細い線のように血が微量流れている。
それを右手の親指で拭っていた。
初めて男の顔をまじまじ見る。
そいつはさっきエレベータでぶつかった男だった。
「だったら何だよ」
佐伯さんを抱きしめたまま、男を見て言う。
「俺さ、3カ月前、急にナオに振られたんだ。お前が原因か」
男は恨みや憎しみを含んだ目で睨んでいる。
自分も応戦するように睨み返した。
「ち、がう」
ずっと顔を埋めて泣いていた佐伯さんが顔を上げ、声を震わせながら話し出した。
「違うわ。彼は関係ない。啓介と別れた理由は、啓介自身がよくわかってるんじゃない?」
「何だよ、それ」
玄関の方を見ると、痛みが治まったみたいで、男はゆっくり立ち上がった。
さっき殴ったとき、口を切ったみたいで、男の口の左端から細い線のように血が微量流れている。
それを右手の親指で拭っていた。
初めて男の顔をまじまじ見る。
そいつはさっきエレベータでぶつかった男だった。
「だったら何だよ」
佐伯さんを抱きしめたまま、男を見て言う。
「俺さ、3カ月前、急にナオに振られたんだ。お前が原因か」
男は恨みや憎しみを含んだ目で睨んでいる。
自分も応戦するように睨み返した。
「ち、がう」
ずっと顔を埋めて泣いていた佐伯さんが顔を上げ、声を震わせながら話し出した。
「違うわ。彼は関係ない。啓介と別れた理由は、啓介自身がよくわかってるんじゃない?」
「何だよ、それ」