モカブラウンの鍵【完結】
玄関に行き、鍵をかける。

つま先に何かが当たった。

足元を見ると、俺の携帯が落ちていた。


あの時の音はこれだったのか。

あの男に襲われかかったとき手に持っていのかな。

俺があと5分長くここに居たら、佐伯さんはあんなことにならなかった。

今、こんなことを考えてもしょうがないけど。


散乱した靴を並べ、自分のカバンと携帯を持ってリビングに行く。

ソファにカバンを置き、ジャケットを脱ぐ。ワイシャツの袖をめくった。


廊下に行き、転がっているボタンを拾う。

左手には4個のボタンが集まった。

多分、あのカーディガンのボタンはほとんどここにあるのだろう。

こんな残骸だけで、さっきの光景が頭に浮かび、もう1発殴っておけばよかったと思う。


あのカーディガン、もう見るのも嫌だろうな。

確か、カバンの中に紙袋が入っていたから、それに入れてもらって俺が処分した方がいいかもな。


忌々しいボタンを握り、カバンから紙袋を出す。

その中にボタンを落とすと、紙とプラスチックの乾いた音がした。

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