モカブラウンの鍵【完結】
――チン
電子レンジから鳴った音で、一時的に頭の中がカラになった。
マグカップと氷水の入ったボウルを持ってリビングへ戻った。
ローテーブルの上にそれを置く。
ソファに座って、マグカップから出る湯気とボウルの表面にできた水滴をただ眺めていた。
バスルームのドアが開く音がすると、後ろから「杉山」と呼ばれる。
佐伯さんは、髪も乾かし終わっていて、血色も良くなっていた。
「何ですか?」
変に意識せず、いつものように話しかける。
「ううん。何でもない。コート、ありがとう」
コートを受け取りながら「佐伯さん。小さめのハンドタオル、ありますか?」と聞いた。
「ああ、うん。ちょっと待ってて」
チェストから出したハンドタオルを佐伯さんから受け取る。
タオルをボウルに浸し、よく絞る。
奇麗に畳んでから、佐伯さんの左頬に当てた。
「冷たっ。杉山?」
「さっき、ここ、殴られたんじゃないですか?」
「うっ、うん。なんで?」
「片方の頬だけ、赤くなっていたから。腫れないよう、痛みはなくても冷やしておいた方がいいですよ。口の中とか切っていませんか?」
「うん、大丈夫」
タオルを押さえている手に、佐伯さんの手がゆっくり重なった。
電子レンジから鳴った音で、一時的に頭の中がカラになった。
マグカップと氷水の入ったボウルを持ってリビングへ戻った。
ローテーブルの上にそれを置く。
ソファに座って、マグカップから出る湯気とボウルの表面にできた水滴をただ眺めていた。
バスルームのドアが開く音がすると、後ろから「杉山」と呼ばれる。
佐伯さんは、髪も乾かし終わっていて、血色も良くなっていた。
「何ですか?」
変に意識せず、いつものように話しかける。
「ううん。何でもない。コート、ありがとう」
コートを受け取りながら「佐伯さん。小さめのハンドタオル、ありますか?」と聞いた。
「ああ、うん。ちょっと待ってて」
チェストから出したハンドタオルを佐伯さんから受け取る。
タオルをボウルに浸し、よく絞る。
奇麗に畳んでから、佐伯さんの左頬に当てた。
「冷たっ。杉山?」
「さっき、ここ、殴られたんじゃないですか?」
「うっ、うん。なんで?」
「片方の頬だけ、赤くなっていたから。腫れないよう、痛みはなくても冷やしておいた方がいいですよ。口の中とか切っていませんか?」
「うん、大丈夫」
タオルを押さえている手に、佐伯さんの手がゆっくり重なった。