モカブラウンの鍵【完結】
「もしもし」

『面倒さそうに出るの、止めてくれる』

「面倒くさいんだからしょうがないだろ。なんか用?」


姉ちゃんからの電話は、必ず面倒なことが多い。


『昨日から旦那が出張なの。夕飯、一緒に食べない?』

「夕食のお誘いって言うより、夕飯作ってくれって言ってるように聞こえるんだけど」

『いいじゃない』


やっぱり。相変わらず、本当に物臭だよな。


「わかったよ。あ、ちょっと待って」


携帯の通話口を手で塞ぎ、佐伯さんを見る。


「今、姉からの電話なんですけど、今日、姉と夕飯食べるんで、佐伯さんもどうですか?」

「えっ、でも、家族水入らずで、じゃないの?」

「違いますよ。姉と2人で食べても美味しくないし、佐伯さんも是非」

「いいの? 本当に?」

「はい」

「じゃあ、お言葉に甘えて」


通話口から手を離し、姉ちゃんに話しかける。

< 89 / 300 >

この作品をシェア

pagetop