モカブラウンの鍵【完結】
「ここが俺の家です」


目の前にあるマンションを指差して言った。


「え、ここ? 一人暮らしで、これってすごいね」

「ここは実家です。2年前に姉が結婚して出て行って、父親は仕事で今年の4月から九州なんです。それで、空き家になるのも勿体ないから、俺が戻ってきたんですよ」

ここに住んでいる経緯(いきさつ)を話しながら、エレベータに乗る。


「そうなんだ。将来のためにマンション買ってるのかと思った」

「貯金はできても、そこまではまだですよ」

「だよね。私もそう」


エレベータは7階に着いた。

佐伯さんの前を歩き、部屋の前に行く。

鍵をあけ、佐伯さんを部屋に入れた。


「おじゃまします」

「どうぞ」


リビングへ行き、暖房を入れる。


「佐伯さん、今日はこの和室使ってください」


リビングの横にある襖を開け、佐伯さんの荷物を置いた。


「ありがとう」

「部屋にあるものとか好きに使っていいですから。俺、ちょっとシャワー浴びてきます。そのあと、お昼食べましょう」

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