Turncoat‐抱きしめられて‐
唇から伝わる温かさと、壁から伝わる冷たさが入り混じる。
何ともいえない感覚と切なさに涙が溢れた。
そんな私を、彼は左腕でぎゅっと抱きしめて。
右手でぽんぽんと頭を撫でていた。
……そっか、私はずっとこうしてほしかったのかもしれないーー……。
もう一瞬でも、偽りでもいい。
私は恐る恐る、彼の背中に手を伸ばしてーー彼の腕の中で目を閉じた。
生温い涙が左頬から流れ落ちていく。
ブーン、ブーン。
PM10:40頃だったと思う、一件の着信があった。
それは、私が今日ずっとずっと待っていた彼氏からの電話だった。