君の笑顔が
「…ねぇ君」
「…」
彼女は表情を変えずに振り返った。
「…名前…何て言うの?」
「…」
彼女は何も発さなかった。
やっぱ、教えてくんねぇか…。
"ごめん"
そう言おうとしたとき。
「…ユキ。」
「…え?ゆき?」
「そう。ユキ」
あ、名前か…。
「…ユキね!俺、石塚雅也。よかったらこれからも会えない?」
勇気を振り絞って言ってみた。
下手したら変な人だと思われる…。
かけに出たんだ。
「…別にいいけど」
よっしゃー!
「じゃあとりあえず、明日10時にここでいい?」
「うん」
「じゃあなユキ!」
ユキと名乗った彼女は歩き出した。
だから俺も家路を…彼女とは逆の方向を歩き出した。
ユキ…か。
嘘か本当かは分からない。
けど、一歩近づけた。
喜びを胸に噛み締め、幸せを堪能した一日だった。