~デンファレ~

契約成立

 「あの!まだ名前聞いてなかったです!」



彼は、「あ~そうだね!」と


脱いであった上着から名刺を取り出し


私にくれた。


「こう言う者です!」


私は両手で受け取った。



「…はい!どうも……青山……さん……。」



(…普通に読むのかなぁ…?難しい………


 私は馬鹿だ!分からん……)



「…なおたか!そう読むんだ。…」



「…あははは~…そうですよね…。」


 恥ずかしくなり会話はなくなった。


沈黙を破ったのは私の携帯だった。



「すいません!……ちょっと…失礼します。」


慌てて立ちドアまで向かって電話に出た。


 「…はい…江波です!…山本さん!」


母の病院の事務長さんからだった。


私は、何となく話の内容が分かっていた。


「…先月分ですね…?はい…月末までには何とか

 はい…いつもすいません…。はい…失礼します。」


やっぱり母の入院費の事だった。


事務長さんはいい人で、ギリギリまで待ってくれる。


他の職員に対して示しをつけるため、電話が来る。


電話を切るといつもため息が出る。


「…はぁ~……」



(お金か………泣きそう…)


「…すいません…ちょっと…出てきます!」


私は、部屋を飛び出し裏口から外に出た。




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