シナモンの香りと優しい貴方【TABOO】
それから、私と雅人はポツリポツリと他愛のない事を話した。
最近見たテレビの話、読んだ本の話、気になる映画の話。
楽しく話している途中に、ふとスマホがメールの着信を知らした。
送信者は、今の彼氏。
私は内容を見ないまま、スマホの電源を落とした。
「……志穂?」
うかがう様な雅人の声に応えられないでいると、
「―――出よう」
立ち上がった雅人が私の手を取った。
「え?」
驚くまま外に連れ出された私は、気が付けば店の外で雅人に抱き締められていた。
「俺、今でも志穂の悲しい顔を見るのは辛いよ」
ちょっとした心のすれ違いから、お互いを傷つけたくないと別れた私達。
優しかった雅人は、今でも優しいね。
すがるように背中に回した手でギュッと服をつかむと、改めて私の目を見つめた雅人の顔が近付いて、私はそっと目を閉じた。
心の奥底に、罪悪感を押し込めて。
何度も重ねられる唇に、ただ温かさを求めた。