魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
それからの数日間というものの、アーシェは相変わらず作業部屋に閉じ籠もったまま。

そしてラスは、はらはらしながらとある出来事を見守っていた。


「ルゥちゃん頑張って。そう、それに掴まるんだよ。あともうちょっと!頑張れっ」


「うぅーー、あううぅ」


ベッドの脚に掴まり、顔を真っ赤にして脚を震わせながら…ゆっくりゆっくり立ち上がった。

すぐ傍でラス同様にはらはらしながら見守っていたコハクは、ルゥがはじめてひとりで立った瞬間に立ち会うことができて大感激。


「ルゥが立った!立ったぞー!」


「ルゥちゃんすごーい!コー、ちゃんと立ってるよ!きゃーっ、嬉しい!」


「お、お、お、俺も立ってきた!」


ラスに抱き着かれてよからぬ色ぼけ発言をしてしまったが、ルゥがすぐぺたんと座り込んでしまい、コハクとラスはルゥを取り囲んで誉めまくった。


「最近ルゥを抱っこするの重たくなってきてたから歩けるようになって嬉しい!これからママと一緒に沢山歩こうね」


「ルゥ、パパとも沢山歩いて遊ぼうな。行きたいとこどこでも連れて行ってやっからな」


「あぷ」


誉めてくれるのが嬉しいのか、立ったり座ったりを繰り返してコハクとラスを目一杯喜ばせた後、歯が生えて離乳食も食べ始めたルゥにお腹いいっぱいお乳と離乳食を与えた後すぐにすやすや眠ってしまった。

そこからは夫婦水入らずの時間になり、バルコニーに出てコハクの膝に座ったラスは、ようやく緊張状態を解いてリラックスしたコハクに身体を預けて満天の夜空を見上げた。


「ルゥも立つことができるようになったし、アーシェの彫像も完成間近なんでしょ?あとコーの心配もなくなったんでしょ?」


「んー、まあ俺の心配はなんていうか…まだよくわかんねえけど大丈夫…なのかな。でもとりあえずチビはしばらくひとりであちこち行ったりすんなよ。必ずドラかデスかどっちかと一緒に居ろ。いいな?」


「うん、わかった。コーも危ないことしないでね。傷治ってきたね、よかった」


本当は魔法でドラちゃんから受けた傷痕などすぐ消すことができるのだが、ラスが心配してくれるので敢えて頬の傷は消していなかった。

そしていつものようにラスの頬をぺろぺろ舐めて部屋の中に戻ったコハクは、ラスをベッドに下ろし、ラスに知られないように赤い瞳を光らせながら、浅い眠りについた。
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