魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
悪魔の襲来
そして“それ”は、コハクとデスが警戒を緩めた時にやって来た。
ラスはその時アーシェの作業部屋で作業を見守っていた。
なるべく音を立てないように静かに座っていることを心がけて、自分がモデルだという彫像の完成をうきうきしながら見守っていた。
だからというわけではないが…
完全に気配を絶って現れた者に肩を抱かれてようやく顔を上げた。
「お前がコハク様の女か」
「………え…だ、誰…」
――濃緑の短い髪と濃緑の瞳…
笑んだ口元から覗いている牙は鋭く、背はコハクよりも高い。
グレーのマントに身を包んでいるのでどんな格好をしているのかわからなかったが…どこかで感じたことのある不気味さをこの男に感じたラスは、身を竦めた。
「俺の名はゼブルと言う。コハク様を敬愛する部下だとも」
「え…でもオーディンさんが…」
「オーディン?あんな奴と一緒にされてほしくないな」
邪悪な気配だ。
無防備に立っているように見えるが、抱かれている肩から何か黒いものに蝕まれていくような気がして、ラスは身をよじってその手から逃れようとしたが…離れない。
「あ、アーシェ…アーシェ!」
「!なんだお前…どこから入った?!」
「なんだお前は。コハク様にそっくりだな。いやいや…これは美しい」
彫像に言ったのかと思ったが、ラスの肩をぱっと離したゼブルは硬直しているアーシェの頬を気持ち悪いほどゆっくり指で撫でてぞっとさせる。
「だがコハク様とは違うな。お前には魔力のかけらも感じられない。おやおや、やって来たぞ」
廊下をばたばたと走る音がしたと思ったらドアが爆発しそうな勢いで開いた。
「チビ!……お前…ゼブルか!?」
「お久しぶりでございます。あなたにお会いしたくて来てしまいましたよ」
「コー…この人…」
普段は人を疑わない天真爛漫なラスがびくびくしながらゼブルから目を離せないでいると、コハクはすぐさまラスに駆け寄って包み込むように抱きしめた。
その間に一緒に駆けてきたデスが死神の鎌を手にゼブルの前に立ちはだかり、目を見張らせた。
「死神…コハク様に侍っていいのは俺だけだぞ。お前がこちらに留まっていることを知って俺がどれだけいらいらしたことか…お前にわからせないとな」
「………帰れ…」
デスの身体から殺気が噴き出す。
ラスは身体の震えを止めることができず、コハクにしがみついた。
ラスはその時アーシェの作業部屋で作業を見守っていた。
なるべく音を立てないように静かに座っていることを心がけて、自分がモデルだという彫像の完成をうきうきしながら見守っていた。
だからというわけではないが…
完全に気配を絶って現れた者に肩を抱かれてようやく顔を上げた。
「お前がコハク様の女か」
「………え…だ、誰…」
――濃緑の短い髪と濃緑の瞳…
笑んだ口元から覗いている牙は鋭く、背はコハクよりも高い。
グレーのマントに身を包んでいるのでどんな格好をしているのかわからなかったが…どこかで感じたことのある不気味さをこの男に感じたラスは、身を竦めた。
「俺の名はゼブルと言う。コハク様を敬愛する部下だとも」
「え…でもオーディンさんが…」
「オーディン?あんな奴と一緒にされてほしくないな」
邪悪な気配だ。
無防備に立っているように見えるが、抱かれている肩から何か黒いものに蝕まれていくような気がして、ラスは身をよじってその手から逃れようとしたが…離れない。
「あ、アーシェ…アーシェ!」
「!なんだお前…どこから入った?!」
「なんだお前は。コハク様にそっくりだな。いやいや…これは美しい」
彫像に言ったのかと思ったが、ラスの肩をぱっと離したゼブルは硬直しているアーシェの頬を気持ち悪いほどゆっくり指で撫でてぞっとさせる。
「だがコハク様とは違うな。お前には魔力のかけらも感じられない。おやおや、やって来たぞ」
廊下をばたばたと走る音がしたと思ったらドアが爆発しそうな勢いで開いた。
「チビ!……お前…ゼブルか!?」
「お久しぶりでございます。あなたにお会いしたくて来てしまいましたよ」
「コー…この人…」
普段は人を疑わない天真爛漫なラスがびくびくしながらゼブルから目を離せないでいると、コハクはすぐさまラスに駆け寄って包み込むように抱きしめた。
その間に一緒に駆けてきたデスが死神の鎌を手にゼブルの前に立ちはだかり、目を見張らせた。
「死神…コハク様に侍っていいのは俺だけだぞ。お前がこちらに留まっていることを知って俺がどれだけいらいらしたことか…お前にわからせないとな」
「………帰れ…」
デスの身体から殺気が噴き出す。
ラスは身体の震えを止めることができず、コハクにしがみついた。