魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
どこかわからない暗い場所に居た。
暗い色のカーテンで遮られた小窓からはわずかに光が漏れていたので、足元に注意しながらカーテンを開けると、窓の外は自然溢れる緑の景色だった。
普段のラスなら喜ぶところだが…
コハクが居ないのにコハクの許可なくこんな所に連れて来られて、今頃どうしようもないほど怒っていることだろう。
自分が傍に居ないといつもいらいらしているコハクのことだから、早く戻らないとデスたちに八つ当たりしてしまうかもしれない――
「ここ…どこなんだろ…。早く戻らなくちゃ」
「戻れませんよ」
はっとして振り返ると、粗末ではあるが家財道具一式揃っている木材の部屋の中央には腕を組んで立っているゼブルの姿が在った。
元々からしてゼブルに好感が持てなかったラスは、不安にそわそわしながら小窓にぴったり張り付いてなんとか距離を取る。
ゼブルはそんなラスを面白そうに眺めて頭のてっぺんからつま先まで見下ろした。
「人間の中では美しい方だ。だがお前程度なら魔界ではいくらでも居る」
「私のことはどうでもいいけど、コーは?コーが絶対怒ってると思うから帰して」
「ほう、この状況で俺に命令をすると?これからどういう目に遭うかもわからずに?」
「私…前にもオーディンさんからこうして連れ去られたことがあるけど、コーはものすごく怒ってたよ。怖かったよ。コーが好きなんでしょ?怒られてもいいの?」
オーディンという名を聞いたゼブルの顔が歪み、嫌悪に思いきり顔をしかめた。
そしてベッドに腰掛けると長い脚を組んで重たい息をつく。
「オーディン、ね。あれはまたコハク様のお傍に侍っているのか。俺がお傍に居ることは駄目でオーディンがいいと?ふん、プライドが傷ついたな」
「あ、ちょ、やめて私に触らないで」
ベッドに腰掛けたままのゼブルがラスに手を伸ばすと、真っ青になったラスはその場に座り込んでがたがた震えてしまった。
その姿にぞくぞくしてしまったゼブルは、中腰になってラスを覗き込むようにして話しかける。
「老いたまま不死にしてやろう。1日に数歳老いる魔法をかけてやろう。コハク様はお前を見つけ出すことができるだろうか?醜く老いたお前を」
「え……?そんな…やめて!」
逃れられる術が見つからない。
ラスの腕を掴んだゼブルは、凶悪な笑みを浮かべてラスの両目を隠すようにして手を押し当てた。
暗い色のカーテンで遮られた小窓からはわずかに光が漏れていたので、足元に注意しながらカーテンを開けると、窓の外は自然溢れる緑の景色だった。
普段のラスなら喜ぶところだが…
コハクが居ないのにコハクの許可なくこんな所に連れて来られて、今頃どうしようもないほど怒っていることだろう。
自分が傍に居ないといつもいらいらしているコハクのことだから、早く戻らないとデスたちに八つ当たりしてしまうかもしれない――
「ここ…どこなんだろ…。早く戻らなくちゃ」
「戻れませんよ」
はっとして振り返ると、粗末ではあるが家財道具一式揃っている木材の部屋の中央には腕を組んで立っているゼブルの姿が在った。
元々からしてゼブルに好感が持てなかったラスは、不安にそわそわしながら小窓にぴったり張り付いてなんとか距離を取る。
ゼブルはそんなラスを面白そうに眺めて頭のてっぺんからつま先まで見下ろした。
「人間の中では美しい方だ。だがお前程度なら魔界ではいくらでも居る」
「私のことはどうでもいいけど、コーは?コーが絶対怒ってると思うから帰して」
「ほう、この状況で俺に命令をすると?これからどういう目に遭うかもわからずに?」
「私…前にもオーディンさんからこうして連れ去られたことがあるけど、コーはものすごく怒ってたよ。怖かったよ。コーが好きなんでしょ?怒られてもいいの?」
オーディンという名を聞いたゼブルの顔が歪み、嫌悪に思いきり顔をしかめた。
そしてベッドに腰掛けると長い脚を組んで重たい息をつく。
「オーディン、ね。あれはまたコハク様のお傍に侍っているのか。俺がお傍に居ることは駄目でオーディンがいいと?ふん、プライドが傷ついたな」
「あ、ちょ、やめて私に触らないで」
ベッドに腰掛けたままのゼブルがラスに手を伸ばすと、真っ青になったラスはその場に座り込んでがたがた震えてしまった。
その姿にぞくぞくしてしまったゼブルは、中腰になってラスを覗き込むようにして話しかける。
「老いたまま不死にしてやろう。1日に数歳老いる魔法をかけてやろう。コハク様はお前を見つけ出すことができるだろうか?醜く老いたお前を」
「え……?そんな…やめて!」
逃れられる術が見つからない。
ラスの腕を掴んだゼブルは、凶悪な笑みを浮かべてラスの両目を隠すようにして手を押し当てた。