魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
自宅でお気に入りの椅子に座ってゆったりしていたゼブルは、全身が粟立つような殺気に襲われて立てかけていた剣に手を伸ばした。
「な…なんだこの殺気……」
今まで感じたことのないほどに不気味で異様で異常な…気が触れた者が発するような気――
灯りを消してじっと息を潜めてドアを見つめていると、小さな足音がドアの前で止まった。
鍵は…かけていない。
ここを訪ねてくるような友人は居ないし、こんな…同等かもしくは格上と思われる殺気を持つ者が来るなんて…
「…誰だ?」
「…………俺、だ…」
ぎぎぎ、とドアノブがゆっくり回る。
ゼブルはゆっくり鞘から剣を抜き、いつも湛えている微笑を消して真顔になった。
「デス…か…?」
「………ラス…は……どこ…だ…」
「…?お前とあの女が…どう関係がある?」
姿を現したのはフードを目深に被った死神だ。
鼻から下しか見えないため、しかも俯いているので表情を読み取ることはできなかったが、その手にはすでに死神の鎌が握られている。
ゆっくり自宅内へと入って来たデスのブーツはやけに重たい音を立てて、いつも足音を立てずに歩いていた印象があるので、存在感の大きさのようなものに勝手に後ずさりしそうになって踏み止まる。
「………ラス……大切な……女の子…」
「大切な?それは…コハク様の女に想いを寄せているということか?死神のお前が?人間の女を?」
「……」
否定は肯定の証。
腕をだらりと下げて無防備なように見えたのでふっと息を吐くと、瞬間目の前にはデスが立っていて息を呑んだ。
「お前……俺に勝てるとでも?」
「……勝つんじゃ…ない…。………殺す」
風の音が鳴った。
飛び退ったが真一文字に腹を切られて赤い線が走る。
ぞっとしたゼブルは自宅を飛び出て大小の岩がごろごろ転がっている荒野に出た。
強風に身体を持っていかれそうになりながらゆっくり出て来たデスを睨みつけていると、デスはフードを払ってスローモーションのように顔を上げた。
「本気か…!」
「…ラス……どこ、だ…?」
「教えると思うか?俺はコハク様を魔界へお迎えするために彼の大切なものは全て消していく。ここがコハク様の居場所だ。俺はお傍に侍ってコハク様の手足となり…」
「………ラス……どこだ…?」
デスの黒瞳が真っ赤な光を発した。
ゼブルは感情の無い死神が感情を得て動いている姿をはじめて見た。
「な…なんだこの殺気……」
今まで感じたことのないほどに不気味で異様で異常な…気が触れた者が発するような気――
灯りを消してじっと息を潜めてドアを見つめていると、小さな足音がドアの前で止まった。
鍵は…かけていない。
ここを訪ねてくるような友人は居ないし、こんな…同等かもしくは格上と思われる殺気を持つ者が来るなんて…
「…誰だ?」
「…………俺、だ…」
ぎぎぎ、とドアノブがゆっくり回る。
ゼブルはゆっくり鞘から剣を抜き、いつも湛えている微笑を消して真顔になった。
「デス…か…?」
「………ラス…は……どこ…だ…」
「…?お前とあの女が…どう関係がある?」
姿を現したのはフードを目深に被った死神だ。
鼻から下しか見えないため、しかも俯いているので表情を読み取ることはできなかったが、その手にはすでに死神の鎌が握られている。
ゆっくり自宅内へと入って来たデスのブーツはやけに重たい音を立てて、いつも足音を立てずに歩いていた印象があるので、存在感の大きさのようなものに勝手に後ずさりしそうになって踏み止まる。
「………ラス……大切な……女の子…」
「大切な?それは…コハク様の女に想いを寄せているということか?死神のお前が?人間の女を?」
「……」
否定は肯定の証。
腕をだらりと下げて無防備なように見えたのでふっと息を吐くと、瞬間目の前にはデスが立っていて息を呑んだ。
「お前……俺に勝てるとでも?」
「……勝つんじゃ…ない…。………殺す」
風の音が鳴った。
飛び退ったが真一文字に腹を切られて赤い線が走る。
ぞっとしたゼブルは自宅を飛び出て大小の岩がごろごろ転がっている荒野に出た。
強風に身体を持っていかれそうになりながらゆっくり出て来たデスを睨みつけていると、デスはフードを払ってスローモーションのように顔を上げた。
「本気か…!」
「…ラス……どこ、だ…?」
「教えると思うか?俺はコハク様を魔界へお迎えするために彼の大切なものは全て消していく。ここがコハク様の居場所だ。俺はお傍に侍ってコハク様の手足となり…」
「………ラス……どこだ…?」
デスの黒瞳が真っ赤な光を発した。
ゼブルは感情の無い死神が感情を得て動いている姿をはじめて見た。