魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
終わったよ…と背中を擦ってくれながらかけられたデスの声――
顔を上げたラスは、ルゥが必死になって手を伸ばして頬に触れてきて、ようやく自分が泣いていることに気付いた。
「…ルゥ……おっきくなったね…」
「まー!まー!」
「俺は今回役立たず。チビを見つけたのはルゥなんだぜ」
コハクの優しい声がすぐ耳元で聞こえて、心の底からほっとしたラスは――声を押し殺してまた泣いてしまった。
…はじめて男から無理矢理乱暴されようとした恐怖が身体を支配して震えが止まらない。
コハクはラスの肩を抱いて頬にキスをすると、ルゥを抱っこしたラスごと抱き上げていち早くその場から立ち去る必要があると感じて、無残に引き裂かれた服を痛々しい思いで見つめた。
「チビ…怖かったろ」
「……ぅん…」
「もうこんなこと絶対ねえから。ごめんな、俺がちょっと目を離した隙に…」
「ううん…。アーシェは…大丈夫?」
「ああ、何もされてねえし。今頃チビがモデルのアートを沢山作ってるかもな」
久々にコハクに抱っこされてすぐ近くにある顔をずっと見つめているラスの視線にぎくしゃくしてしまったコハクは、すっかり点滅が収まったルゥの水晶を顎で指す。
「こいつが持って生まれてきたその水晶さ、チビが居る方向を指して光り続けたんだぜ。グリーンリバーに帰ったらめっちゃ誉めてやってくれよ」
「ルゥ…ありがとね。ママ…頑張ったよ」
「あぷうー!」
地下を出ると、そこは魔界らしく紫雲や雷の降り注ぐ地獄のような世界。
コハクはラスに目を閉じるように言うと、デスに目配せをしてゼブルがやったように空間に真っ黒な穴を開けて足を踏み入れた。
美しいいつものラスに戻ったが――表情は冴えずに曇ったまま。
自分がルゥを見つけるまでの数か月、誰にも会えずに独りぼっちであの小さな家で暮らしている間、希望と絶望が入り混じってつらかっただろう。
そのつらさは、わかるようでわからない。
コハクはただずっとラスを抱きしめ続けて、トンネルの出口に着くとそこはグリーンリバーの自分の部屋で、ベッドにラスを降ろした。
ラスはそれから少しの間、塞ぎ込んだ。
顔を上げたラスは、ルゥが必死になって手を伸ばして頬に触れてきて、ようやく自分が泣いていることに気付いた。
「…ルゥ……おっきくなったね…」
「まー!まー!」
「俺は今回役立たず。チビを見つけたのはルゥなんだぜ」
コハクの優しい声がすぐ耳元で聞こえて、心の底からほっとしたラスは――声を押し殺してまた泣いてしまった。
…はじめて男から無理矢理乱暴されようとした恐怖が身体を支配して震えが止まらない。
コハクはラスの肩を抱いて頬にキスをすると、ルゥを抱っこしたラスごと抱き上げていち早くその場から立ち去る必要があると感じて、無残に引き裂かれた服を痛々しい思いで見つめた。
「チビ…怖かったろ」
「……ぅん…」
「もうこんなこと絶対ねえから。ごめんな、俺がちょっと目を離した隙に…」
「ううん…。アーシェは…大丈夫?」
「ああ、何もされてねえし。今頃チビがモデルのアートを沢山作ってるかもな」
久々にコハクに抱っこされてすぐ近くにある顔をずっと見つめているラスの視線にぎくしゃくしてしまったコハクは、すっかり点滅が収まったルゥの水晶を顎で指す。
「こいつが持って生まれてきたその水晶さ、チビが居る方向を指して光り続けたんだぜ。グリーンリバーに帰ったらめっちゃ誉めてやってくれよ」
「ルゥ…ありがとね。ママ…頑張ったよ」
「あぷうー!」
地下を出ると、そこは魔界らしく紫雲や雷の降り注ぐ地獄のような世界。
コハクはラスに目を閉じるように言うと、デスに目配せをしてゼブルがやったように空間に真っ黒な穴を開けて足を踏み入れた。
美しいいつものラスに戻ったが――表情は冴えずに曇ったまま。
自分がルゥを見つけるまでの数か月、誰にも会えずに独りぼっちであの小さな家で暮らしている間、希望と絶望が入り混じってつらかっただろう。
そのつらさは、わかるようでわからない。
コハクはただずっとラスを抱きしめ続けて、トンネルの出口に着くとそこはグリーンリバーの自分の部屋で、ベッドにラスを降ろした。
ラスはそれから少しの間、塞ぎ込んだ。