魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスの瑞々しい肢体の隅々まで唇と指を這わせると、すぐに息が上がった。

普段は鈍感でぽやっとしているラスだが意外と敏感で感じやすく、すぐに熱を持って反応する。

第2子の妊娠にとてつもない喜びを覚えていたが、ルゥを妊娠した時つわりが激しかったので今回もそうだろう。

つわりが始まれば妊娠した実感を感じるだろうが、お腹の中の子供のためにも――乱暴にしてはいけない。


「チビ……大丈夫、か…?」


「ん……だい、じょうぶ……」


ゆっくりと身体を揺すり、時折漏れる切なげな吐息に五感の全てが高まって集中して、全てがラスに向かっていた。

ラスが心配していたようなものは何も起こっていないし、身体はとても綺麗なまま。

絡めた指先も力強く握り返してくれるし、老いた時のラスに同じことをしたら…骨が砕けていただろう。

本当に寸前での救出劇だったのだ。


「なんで顔見ねんだよ。こっち…見ろって」


「ゃだ…っ、なんか…見れない…!…ん…っ」


覆い被さっていたコハクは顔を逸らし続けるラスの両頬を包み込んで舌を絡めてキスをした。

そうすると突っぱねていたラスの身体から完全に力が抜けて、とろんとした瞳が自分を捉えたので快感が競り上がる中笑いかけた。


「なんも変わってねえよ。唯一変わってんのは腹ん中にルゥの弟か妹が居るってことだけだ」


「うん…うん……!私しっかりしないと…。でもコー…すごく怖かったの。すごく…!」


「ん、あいつはもう消滅したからもう2度と現れることもねえし、これからゆっくり心の傷を癒して、身体を労わっていこう。俺がいつでも助けるから。心の支えになるからさ」


「ありがとう…コー…」


見上げてくるラスの頬にコハクの汗が落ちて弾けた。

同じタイミングで白い閃光に襲われて身体から力が抜けてぐったりしながらラスの隣に横たわったコハクは、ラスの腹に手をあてて願をかける。


「無事に生まれて来いよ。妹!妹!!」


「また女の子希望なの?ルゥの遊び相手なら男の子の方がいいと思うけど」


「本当は一姫二太郎がよかったんだけど、順番はともかくチビそっくりな妹を守る兄2人。…イイ!俺も加わる!」


「お兄ちゃんたちにべったりされたら勇者様を見つけにくくなるから反対」


ラスは唇を尖らせた勇者様の唇にちゅっとキスをしてでれっとさせると、胸にすり寄って心が落ち着いていくのを感じていた。
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