魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
グリーンリバーの中央には住人や観光客たちの憩いの場となる公園がある。

公園内には噴水があり、等間隔に設置されたベンチと改造済みの魔物たちがせっせと植えた色とりどりの花々が咲き誇る。

彫像の翼は緻密に彫られていて、部屋から移動させるのにも崩れ落ちそうで怖かったので、コハクはラスの肩をしっかり抱いて転ばないように気を付けつつ、アーシェに断りを入れた。


「今彫像はチビの影ん中にあるんだけど、壊れねえようにちょっと魔法かけたんだ。いいよな?」


「構わない。魂を削る思いで作った。ここの皆が喜んでくれるとありがたい」


「そんなの当然だよ!だってすごく綺麗だもん。抱っこしてる卵も女の人も翼もっ」


「チビがモデルなんだぞー。チビは天使ちゃんで、女神ちゃんなんだぞー!」


でれでれめろめろのコハクはベビーカーを担いで階段を降りた後、動物たちに庭で待っているように言ったのだが…


『僕たちも一緒に行くよ。お嬢さんから離れたくないんだ』


「言っとくけどチビは俺だけのお嬢さんなんだからな。お前らなんか所詮暇つぶ……おいチビ、待って!」


コハクがどこまでもついて来る動物たちに牽制をかけようとした時、ラスはベビーカーを押してさっさと先に行ってしまい、アーシェに笑われた。

デスはいつもラスの傍に居るので、こういう時だけちょっと機敏な動きを見せるデスに嫉妬しつつ、小走りに後を追いかける。


観光客たちははじめてコハクやラスを見ることになるので、男女共に一瞬で目を奪われて、手にしていたアイスクリームや飲み物を地面に落としてしまう。

万が一危険なことがないようにと改造済みの魔物たちも一緒について来るので、動物たちも加えたり、コハクとそっくりのアーシェが居たり、真っ黒づくめのフードを目深に被った男がいたりとキワモノ集団に成り果てているコハクたちの後にはぞろぞろと集団が集結しつつ増えつつあった。


「よーし、着いたぞー。まずは掃除!ほらお前らさっさとやれよ」


「待ってコー。私も一緒にお掃除する!」


ラスはコハクの腕にルゥを押し付けると、箒とちりとりを手に腕まくりをした。

アーシェが作ってくれた彫像が映えるようにと願いながら、手を動かし続けた。
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