魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
それからというものの――
ラスが自分そっちのけでグラースの腹に注目する日々が始まった。
グラースは日々街を巡回して交流を行ったり街の外に出て魔物の撃退に向かったりしていたのだが…
グラースの妊娠がわかってから何かといっては部屋に呼び寄せて椅子に座らせて、美味しい物を食べさせたり腹をじっと見つめる日々。
「…ラス」
「え?なあに?」
「私の腹に穴が空いてしまう」
「だって…赤ちゃん産むんだよ?それに私、ルゥちゃんの時とは違って全然つわりがないし…グラースは気分悪そうにしてる時があるでしょ?ドラちゃんはちゃんと協力してくれてるの?」
無理矢理ソファに座らされたグラースがバルコニーの方を指すと、ラスが動く度について来るコハクと一緒にバルコニーに出て庭を見下ろした。
そこには日向ぼっこをしている動物たちと、大きな口を開けて日向ぼっこをしつつ、その口の中をちょろちょろ動き回っているルゥと、それを見守っているデスが居た。
「あいつは日がなああしてのんびりしている。雄のドラゴンは子育てなどしないものだと言っていた」
「そんな…コー、ドラちゃんを説得して。グラースははじめて赤ちゃん産むんだから協力してもらわないと」
唇を尖らせてドラちゃんを見下ろすラスの期待に応えるべく、コハクは手すりをひらりと跨いで飛び降りると、ドラちゃんの頭に着地した。
『貴様何をする。殺されたいのか』
「チビが子育てに協力しろって言ってんぞ。チビに逆らえるのかなー」
ドラちゃんが瞳孔の狭い金色の瞳をゆっくり開いた。
コハクを見つけたルゥが口の中から這い出ると、ドラちゃんは口を閉めてむくりと上体を起こす。
山のようなドラちゃんを見上げたコハクは、肩を竦めて最上階を指した。
「チビが見てるんだけど。俺とやる気か?ああ?」
『俺とベイビィちゃんの子なら子育てに協力する』
「そんな機会一生ねえよ!死ねこの馬鹿ドラゴン!」
説得のつもりが結局喧嘩に発展してしまい、大体それを見越していたラスは部屋に戻ってグラースの隣にぴったり座ってすり寄った。
「ごめんね、説得失敗しちゃった」
「問題ない。大体私はひとりで産むつもりだった。ルゥや今度生まれる子供を守れる強い男になってほしい」
「え?どうして男だってわかるの?」
グラースは切れ長の緑の瞳を緩めて笑った。
「わかる。この子がそう言っている」
そう言って、まだ膨らんでいない腹を撫でた。
ラスが自分そっちのけでグラースの腹に注目する日々が始まった。
グラースは日々街を巡回して交流を行ったり街の外に出て魔物の撃退に向かったりしていたのだが…
グラースの妊娠がわかってから何かといっては部屋に呼び寄せて椅子に座らせて、美味しい物を食べさせたり腹をじっと見つめる日々。
「…ラス」
「え?なあに?」
「私の腹に穴が空いてしまう」
「だって…赤ちゃん産むんだよ?それに私、ルゥちゃんの時とは違って全然つわりがないし…グラースは気分悪そうにしてる時があるでしょ?ドラちゃんはちゃんと協力してくれてるの?」
無理矢理ソファに座らされたグラースがバルコニーの方を指すと、ラスが動く度について来るコハクと一緒にバルコニーに出て庭を見下ろした。
そこには日向ぼっこをしている動物たちと、大きな口を開けて日向ぼっこをしつつ、その口の中をちょろちょろ動き回っているルゥと、それを見守っているデスが居た。
「あいつは日がなああしてのんびりしている。雄のドラゴンは子育てなどしないものだと言っていた」
「そんな…コー、ドラちゃんを説得して。グラースははじめて赤ちゃん産むんだから協力してもらわないと」
唇を尖らせてドラちゃんを見下ろすラスの期待に応えるべく、コハクは手すりをひらりと跨いで飛び降りると、ドラちゃんの頭に着地した。
『貴様何をする。殺されたいのか』
「チビが子育てに協力しろって言ってんぞ。チビに逆らえるのかなー」
ドラちゃんが瞳孔の狭い金色の瞳をゆっくり開いた。
コハクを見つけたルゥが口の中から這い出ると、ドラちゃんは口を閉めてむくりと上体を起こす。
山のようなドラちゃんを見上げたコハクは、肩を竦めて最上階を指した。
「チビが見てるんだけど。俺とやる気か?ああ?」
『俺とベイビィちゃんの子なら子育てに協力する』
「そんな機会一生ねえよ!死ねこの馬鹿ドラゴン!」
説得のつもりが結局喧嘩に発展してしまい、大体それを見越していたラスは部屋に戻ってグラースの隣にぴったり座ってすり寄った。
「ごめんね、説得失敗しちゃった」
「問題ない。大体私はひとりで産むつもりだった。ルゥや今度生まれる子供を守れる強い男になってほしい」
「え?どうして男だってわかるの?」
グラースは切れ長の緑の瞳を緩めて笑った。
「わかる。この子がそう言っている」
そう言って、まだ膨らんでいない腹を撫でた。