魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
それから部屋に着くまで、互いに無言が続いた。
コハクは頭の中が真っ白になってしまって何も考えられなかったし、ラスは普段よく喋るコハクの表情がいつもと少し違って見えて、どきどきしていた。
――コハクはいつもすぐ傍にいてくれた存在なので、こうしてどきどきすることはあまりない。
抱かれる直前はそういう雰囲気になってどきどきするが…今まさしくそんな気分になっていて、汗をかいていて匂わないかどうか気になっていた。
どう場を和ませようか…
真剣に考えたが良いアイディアが思いつかないまま部屋に着いてしまうと、船底の部屋は先程とは違う景色を見せて、ラスの瞳が輝いた。
「コー…緑色の光だ!すごく綺麗!」
「あれは発光するクラゲだな。今頃海の上も緑色に発光してると思うけど…見に行くか?」
「ううん、ここに居る。コー…どうして私がここに来たいか…わからないの?」
精一杯誘ってみせたラスは、コハクの腕から降ろしてもらうと、上目遣いでじっと見上げた。
コハクはどうすればいいかわからないというどこか途方に暮れた表情で、くるりと背中を向けたラスの腰を抱いた。
「チビ?」
「背中側にファスナーがあるから…コー、下げて」
「…あ、ああ、わかった。…なんか俺…だっせえ。普段どうやってチビを抱いてたかわからなくなってる…。俺…どうやってたっけ?」
「知らない。私はコーがはじめての人だけど、コーは私がはじめての人じゃないでしょ?お師匠さんを抱いた時のこと思い出したら?」
じわりと非難されて焦ったコハクは、震えそうになる指をなんとか動かしてファスナーを下げたが…真っ白な肌が現れると、また眩暈がしてきてラスを背中から覆い被さるようにして抱きしめた。
「お師匠の時は…なんか無我夢中で覚えてねえし。それにその件は水に流してくれたはずだろ?俺なんか今…初体験するガキみてえな気分だ。チビ…俺のはじめての女になってくれ」
「水に流してあげたけど、忘れてはないんだからね。コー…抱っこしてあげる。こっちにおいで」
着ていたワンピースが床に落ち、背中を向けていたラスはコハクと真向かいになって、何故か震えているコハクを優しく抱きしめた。
とても愛しくて、優しくて、せつない気分に陥って、切れ長の赤い瞳を潤ませて何かを怖がっている大切な人を…ベッドに導く。
「…ラス……」
久々に名を呼ばれてぞくりときながら、コハクの両頬に手を伸ばして背伸びをして、キスをした。
コハクは頭の中が真っ白になってしまって何も考えられなかったし、ラスは普段よく喋るコハクの表情がいつもと少し違って見えて、どきどきしていた。
――コハクはいつもすぐ傍にいてくれた存在なので、こうしてどきどきすることはあまりない。
抱かれる直前はそういう雰囲気になってどきどきするが…今まさしくそんな気分になっていて、汗をかいていて匂わないかどうか気になっていた。
どう場を和ませようか…
真剣に考えたが良いアイディアが思いつかないまま部屋に着いてしまうと、船底の部屋は先程とは違う景色を見せて、ラスの瞳が輝いた。
「コー…緑色の光だ!すごく綺麗!」
「あれは発光するクラゲだな。今頃海の上も緑色に発光してると思うけど…見に行くか?」
「ううん、ここに居る。コー…どうして私がここに来たいか…わからないの?」
精一杯誘ってみせたラスは、コハクの腕から降ろしてもらうと、上目遣いでじっと見上げた。
コハクはどうすればいいかわからないというどこか途方に暮れた表情で、くるりと背中を向けたラスの腰を抱いた。
「チビ?」
「背中側にファスナーがあるから…コー、下げて」
「…あ、ああ、わかった。…なんか俺…だっせえ。普段どうやってチビを抱いてたかわからなくなってる…。俺…どうやってたっけ?」
「知らない。私はコーがはじめての人だけど、コーは私がはじめての人じゃないでしょ?お師匠さんを抱いた時のこと思い出したら?」
じわりと非難されて焦ったコハクは、震えそうになる指をなんとか動かしてファスナーを下げたが…真っ白な肌が現れると、また眩暈がしてきてラスを背中から覆い被さるようにして抱きしめた。
「お師匠の時は…なんか無我夢中で覚えてねえし。それにその件は水に流してくれたはずだろ?俺なんか今…初体験するガキみてえな気分だ。チビ…俺のはじめての女になってくれ」
「水に流してあげたけど、忘れてはないんだからね。コー…抱っこしてあげる。こっちにおいで」
着ていたワンピースが床に落ち、背中を向けていたラスはコハクと真向かいになって、何故か震えているコハクを優しく抱きしめた。
とても愛しくて、優しくて、せつない気分に陥って、切れ長の赤い瞳を潤ませて何かを怖がっている大切な人を…ベッドに導く。
「…ラス……」
久々に名を呼ばれてぞくりときながら、コハクの両頬に手を伸ばして背伸びをして、キスをした。