魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
朝になっていそいそとデスの部屋を出たコハクは、隣室の自室のドアをノックして髪や服装を整えた。

いつだってラスに“かっこいい”と言われたいので意外とみだしなみには気を付けているのだが…今のところあまり“かっこいい”と言われたことがない。

逆にデスにはよく“かっこいい”や“可愛い”と言っているので一体どういうことなんだといつもやきもきしていたりする。


「…出てこねえな」


「………お腹…空いた……」


「お前はいつだって腹減らしてんだろ、ちょっと待てって。おーいチビー」


外から声をかけても返事はなく、密かに部屋に張っていた結界を解いて部屋の中へと入ったコハクは、ベッドで3人仲良く川の字になって寝ているラスを見つけて頬を緩めた。

もちろんラスは真ん中で、しかも…グラースはベッドに寝ているだけで、起きている。

コハクが唇を尖らせると、グラースはがっしりラスに掴まれている腕を上げて見せた。


「これだからベッドから出れなかった」


「振り払えばいいだろが。あーいいなー、俺も真ん中で寝た……間違えた。チビといちゃいちゃしながら寝てえなー」


「いつもそうしているだろうが。代われ」


ラスに掴まれている腕をそっと外したグラースは屋上へと向かう。

屋上ではいつもドラちゃんが日光浴をしているので会いに行くのだろうが…あの2人、意外とうまくいっているのかもしれない。


「まー。まー」


デスが抱っこしていたルゥがすやすや寝ているラスを見て小さく声を上げて欠伸をした。

コハクはベッドに腰掛けてラスの隣にルゥを寝かしてやると、ルゥはラスに抱き着いてすぐに眠ってしまった。


「年子かー。毎年年子ってのもいいけどチビに負担かかりそうだし…よし決めたぞ。女の子が産まれたらひとまず打ち止めにする!それまでは頑張る!」


「……女の子……俺も…可愛がる……」


「はあ?可愛がるってどういう意味だおい。このロリコン!」


デスの首をぎゅうぎゅう絞めたコハクだったが…実は人のことは言えないはずなのに、それは置いておいて、棚上げ。

そうこうしているうちに少し騒いだためラスが起きると、次いでティアラも起きてネグリジェ姿を見られたくなくてシーツに潜った。


「ど、どうして魔王がここに…!」


「ここ俺とチビの部屋だし。で、俺とチビはいつもそのベッドで…」


「きゃーきゃーやめてっ!想像させないで!」


昨晩たっぷり夜の話をしていたので思い出してしまったティアラが絶叫。

旅をしていた時のことを少し思い出したコハクは、ティアラをからかいまくってラスを笑わせた。
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