魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「ベルル!」
扉を潜った所で待っていたのは、人のサイズになったベルルだった。
黒髪の美しい巻き毛は相変わらずで、出会った頃と何も変わっていないが…
ただ唯一違うのは、腕に小さな小さな赤ちゃんを抱いていたことだった。
「ラス!ここまで会いに来てくれたなんて嬉しいわ!」
「最近ずっとベルルが居なかったからどうしたのかと思ってコーに聞いてみたら、赤ちゃんを産んだって聞いたから…。すごくびっくりしたんだよ?」
駆け寄ったラスは、まだ髪の毛もふわふわで指をおしゃぶりしている赤ちゃんの顏を覗き込んだ。
ティアラたちも一緒になってきゃっきゃと騒いでいると、ラスはきょろりと辺りを見回してベルルに問うた。
「赤ちゃんが居るってことは旦那さんも居るんでしょ?どこに居るの?」
「ごめんなさい、私たち妖精は元々人にはあまり姿を現さないからここには来ないと思うわ。…でもコハク様と同じくらいかっこよくて優しいの」
「きゃんっ」
のろけられてラスが妙な声を上げると、後をついて来てないことに気付いたコハクが引き返してきて2階の手すりから声が降ってきた。
「おいチビ、早く来いって。お、ベルルか?お前も母親になったんだな」
「コハク様…はい、だからあたしはもうコハク様のお傍には居られません。長い間お世話になりました」
「え、え…?ベルル…もう一緒に居られないの?」
一気に悲しい顔へと変わったラスの腕に壊れてしまいそうなほどに小さな赤ちゃんを抱っこさせたベルルは、にかっと笑って階上のコハクに頭を下げた。
「まあ俺は元々お前を契約で縛ったりしてねえし、いいんじゃね?だけどたまには顔を出せよ。チビが悲しがるからさ」
…あくまでラス最優先。
ベルルとしては少しでも“お前が居なくて寂しい”と言わせてみたかったのだが、変わらないコハクに苦笑が滲む。
「じゃあ女王様に会ってくるね。ベルル、すぐ戻って来るからここに居てね?」
「ええ。ラスこそ女王様には気を付けてね。あの方気まぐれだから何をするか…」
「うん、わかった」
本当に分かっているのかどうなのか…
ラスの返事も相変わらずで、笑みが込み上げた。
扉を潜った所で待っていたのは、人のサイズになったベルルだった。
黒髪の美しい巻き毛は相変わらずで、出会った頃と何も変わっていないが…
ただ唯一違うのは、腕に小さな小さな赤ちゃんを抱いていたことだった。
「ラス!ここまで会いに来てくれたなんて嬉しいわ!」
「最近ずっとベルルが居なかったからどうしたのかと思ってコーに聞いてみたら、赤ちゃんを産んだって聞いたから…。すごくびっくりしたんだよ?」
駆け寄ったラスは、まだ髪の毛もふわふわで指をおしゃぶりしている赤ちゃんの顏を覗き込んだ。
ティアラたちも一緒になってきゃっきゃと騒いでいると、ラスはきょろりと辺りを見回してベルルに問うた。
「赤ちゃんが居るってことは旦那さんも居るんでしょ?どこに居るの?」
「ごめんなさい、私たち妖精は元々人にはあまり姿を現さないからここには来ないと思うわ。…でもコハク様と同じくらいかっこよくて優しいの」
「きゃんっ」
のろけられてラスが妙な声を上げると、後をついて来てないことに気付いたコハクが引き返してきて2階の手すりから声が降ってきた。
「おいチビ、早く来いって。お、ベルルか?お前も母親になったんだな」
「コハク様…はい、だからあたしはもうコハク様のお傍には居られません。長い間お世話になりました」
「え、え…?ベルル…もう一緒に居られないの?」
一気に悲しい顔へと変わったラスの腕に壊れてしまいそうなほどに小さな赤ちゃんを抱っこさせたベルルは、にかっと笑って階上のコハクに頭を下げた。
「まあ俺は元々お前を契約で縛ったりしてねえし、いいんじゃね?だけどたまには顔を出せよ。チビが悲しがるからさ」
…あくまでラス最優先。
ベルルとしては少しでも“お前が居なくて寂しい”と言わせてみたかったのだが、変わらないコハクに苦笑が滲む。
「じゃあ女王様に会ってくるね。ベルル、すぐ戻って来るからここに居てね?」
「ええ。ラスこそ女王様には気を付けてね。あの方気まぐれだから何をするか…」
「うん、わかった」
本当に分かっているのかどうなのか…
ラスの返事も相変わらずで、笑みが込み上げた。