魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスがキッチンで料理を作っている間、コハクは邪魔をしないようにしながらもルゥを抱っこしてキッチンに留まり、真剣な顔でフライパンを握っているラスを見てうっとりしていた。

正直言ってここまでラスに惚れ込んでいる自分自身を気持ち悪いと感じつつも、ヘンタイであると自覚しつつも、口元がにやけるのを止めることができない。

ルゥがにやにやしてしまう口元に手を伸ばして触ってきたので、コハクはルゥの小さな指に甘噛みしながら漂い始めたいい匂いを吸い込んだ。


「もうちょっと待っててね、コー。スープを作らなきゃ。あと野菜を切って…」


「急がなくっていいし。チビ、俺が手伝おうか?夫婦一緒に共同作業を…んで夜も共同作業を……」


「きゃあっ、お肉が焦げちゃった!コー、集中できないからあっちに行ってて!できたらすぐ持って行くから!」


怒られてしまってしょぼんとなりながらキッチンを出たコハクは、ラスの負担軽減のためにセッティングだけ先に進めておこうと思って階上の部屋へ移動すると、テーブルクロスを広げた。

まだルゥがお乳を飲む年頃なのでラスはアルコールを摂取するのを控えていたため、濃度の低い甘い果実酒を用意して氷水の入ったボウルで冷やしておく。


「ルゥ、お前も弟か妹が欲しいだろ?お兄ちゃん風吹かしたいだろ?パパは女の子がいいなー。女の子が生まれたらお前がお兄ちゃんとして守って近寄ってくる男共をやっつけるんだぞ」


「あぶぅ」


へにゃっと笑ったルゥのわき腹をくすぐると、可愛い笑い声が部屋中に響いた。

改造済みの魔物たちもこの小さな命を可愛がり、隙あらば子守りの役目を賜ろうとにじり寄って来る。

リロイとティアラにはまだ子供が生まれていないが、あの仲の良さならば近いうちにはルゥの遊び相手ができそうだ。


「コー、ルゥ、お待たせ。ちょっと焦げちゃったんだけど…食べてもらえると嬉しいな。ルゥちゃんにはオレンジのゼリーとオートミールを作ってあげたよ。あとママのおっぱいでいいよね?」


「俺も!俺も全部欲しい!」


「コーにもゼリー作ってあげたから喧嘩しないでね。じゃあ食べよっか」


コハクの隣に座ってルゥを膝に抱いたラスは、よだれかけをルゥに掛けてやると、ゼリーを口元に持っていった。

美味しそうにゼリーを頬張ってまた口を開けたルゥが愛しくて、自身の食事も忘れて幸せな新婚旅行の時間を楽しんだ。
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