魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ユニコーンは処女でないと触れないと言う定説――

それをルゥが根底から覆した。


真っ白な身体をしたユニコーンは、ルゥに顔を近付けて長い鼻づらで首から下がっている水晶をつんと突いた。

ルゥはといえば大はしゃぎで、掌を近付けるとぺろりと舐められて甲高い歓声を上げていた。


「わあ、ルゥちゃんのこと大好きみたいだね。どうする?背中に乗せてもらおっか?」


「あ!う!」


ルゥを抱っこしたラスが大人しく座っているユニコーンの背中にルゥを乗せると、重力を感じさせない動作ですっと立ち上がった。

そしてゆっくとした足取りで歩き出すと、ラスはルゥの背中を支えてやりながら驚いた顔で呆気に取られているコハクを見て噴き出した。


「コー、面白い顔してる」


「失礼な!しっかしまあ…驚いたな…ユニコーンが男に触らせるなんてさ。俺が触ろうもんなら…」


コハクが近付こうとするとすぐさま鼻を鳴らして警戒するユニコーン。

これが本来のユニコーンの反応なので別に怒りはしなかったが、ルゥを振り払うことなく尻尾を上下に動かして楽しそうにしている。


「やっぱりその子は特別な子なのね。…普通が一番なのに」


「え、ルゥちゃんは普通だよ?あ、でも将来は勇者様になるんだから普通じゃないのかな。ねールゥちゃんっ」


「あーいー!」


元気よく返事をしたルゥとユニコーンとラスが遊んでいると、泉に居たリロイたちがやって来た。


「コハク様、今日は泊まって行って下さるんでしょ?女王を除いて私たち精霊が大歓迎させて頂きます!」


「ああ、じゃあ一泊してくか。チビ、精霊たちの宴が見れるぜ」


「え、それ何?楽しそうっ」


ユニコーンの背中からルゥを降ろして抱っこしたラスがコハクに駆け寄ると、ユニコーンは離れて行くでもなくラスの後をゆっくり追ってコハクの近くにまでやって来た。


すごいのはルゥなのかラスなのか――

とにかく最高の遺伝子を受け継いだルゥと、世界で一番可愛くて天使ちゃんな妻をゲットした魔王は、でれでれしながらルゥもろともラスを抱っこして頬にキスをしまくった。
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