魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
女王は城から出てこない。

かつて男女の仲にあった気位の高い女は、ラスに再び攻撃しようものならその地位から引き摺り下ろされてここから追放されてしまうことを知っているから、出てこない。


「コー、すごいね!妖精さんたちがこんなに…!」


夜になって辺りが暗くなると、妖精たちが放つ仄かな緑や白の光が残像を残しながらあちこちを飛び回っていた。


熱を放たないなら、という条件で火を使うことを許されたコハクは小枝を集めて明り取りのために火を熾していたのだが、それはどうやら必要なかったようだ。


大小様々な妖精はラスたちをからかうようにして飛び回り、ルゥの肩や頭に留まったりして喜ばせる。


中でも驚きだったのは、妖精たちがグラースの周囲に集まって大小様々な手で腹を撫でたことだ。


『不思議な子。何かを為す特別な子になるかも』


『ドラゴンと人の間の子よ、あなたに加護を』


「ありがとう。そうか…この子は特別なのか」


「そりゃ特別だろ、あのエロドラゴンの子だぞ。絶対エロくなるに決まってるだろうし。そういう点ではルゥが女の子じゃなくてよかった!」


「もしかしてグラースとドラちゃんの赤ちゃんも勇者様になるのかなあ?すごいっ、勇者様だらけ!」


「なんか有難味がねえんだけど!まいっか、おいグラース、その子はルゥの従者だからな。ルゥ以上に目立つの禁止!」


「元よりそんなことは望んでない。私はただ若いうちに子供が産みたかっただけだ」


――デスは淡い光を放つ妖精たちをずっと見上げていた。


魔界には存在しなかった聖なる妖精たちは美しくて綺麗で…

そんな妖精たちがラスの元に集まって、グラースの時のように腹に触れてくすくすと笑っていた。


『この子は…またすごいわね』


『ええそうね、この子もすごいわ。さすが魔王様の子よね』


「ちょ、待て!お前たち…2人目が男の子か女の子かわかってるのか?」


『くすくす、もちろんよ。でも教えなーい』


捕まえようとしてひらりと逃げられたコハクは、むかむかを隣に座っていたデスに向けてわき腹を殴りまくった。


「お前も知ってるんだろ?教えろ!今すぐ教えろ!」


「………やだ」


こんなやりとりを楽しいと思うのは、秘密。
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