魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
夜は、ラスが待ち望んでいたごろ寝に決まった。
ふかふかな草の絨毯の上で寝たいと駄々をこねるラスと、ちゃんと絨毯を敷いて寝なさいと叱るコハク。
相変わらずなふたりのふんわりしてしまう掛け合いに終止符を打ったのは、ベルルだった。
「ラス、あなた妊娠してるんだからコハク様の言うことをちゃんと聞いて。朝は露が草につくから身体が冷えるわ。だから我が儘言わないで」
「うん、わかった。残念だけどまた今度の機会にするね」
駄々をこねたもののごもっともな正論だったので、素直に頷いたラスは、デスの膝の上ですやすや眠っているルゥを受け取って絨毯を敷いたコハクに笑いかけた。
「コー、心配してくれてありがとう。でも私つわりも全然なくて、本当にお腹に赤ちゃんが居るのかなあ?」
「間違いねえよ。つわりはこれからかもしんねえし、とにかく激しい運動禁止!…あ、俺は激しい運動したいんだけど我慢…」
「激しい運動?それってどんな運動?」
「それはさあ……いでででっ!」
にやにやしっぱなしの色ぼけ魔王がラスに妙なことを吹きこまないようにとコハクの耳を引っ張ったリロイは、瞳を尖らせて無言の抗議をした。
その間に女性陣はごろんと横になると、生い茂った木々の間から見える満天の星と、妖精たちが放つ燐光に見惚れてうっとりしていた。
「綺麗…。こんな綺麗な世界があるなんて…」
「うん、本当はここって人間が入ってこれない所なんだよね。ベルル、押しかけてきちゃってごめんね」
「いいのよ、コハク様は顔パスだし、あなただってもうみんなに受け入れられてるわ。いつだって遊びに来ていいのよ」
「うん!またすぐ遊びに来るから。ね、コー」
「ああそうだな。さあて寝るぞー。チビ、もうちょっとこっち来いって」
コハクがラスを抱き寄せて、リロイがティアラを抱き寄せる。
デスはしがみついて離れないルゥを抱っこしてラスにぴったり寄り添って眠り、そして――
「…呼んでないが、来たのか」
『お前に会いに来たんじゃない。子を案じて来ただけだ』
皆が寝静まった頃にのそりと現れた真っ黒で大きなドラゴンは、言葉とは裏腹にグラースを包み込むようにして座ると、金色の瞳を閉じる。
グラースはドラちゃんのあたたかい身体に包まれて、眠りについた。
ふかふかな草の絨毯の上で寝たいと駄々をこねるラスと、ちゃんと絨毯を敷いて寝なさいと叱るコハク。
相変わらずなふたりのふんわりしてしまう掛け合いに終止符を打ったのは、ベルルだった。
「ラス、あなた妊娠してるんだからコハク様の言うことをちゃんと聞いて。朝は露が草につくから身体が冷えるわ。だから我が儘言わないで」
「うん、わかった。残念だけどまた今度の機会にするね」
駄々をこねたもののごもっともな正論だったので、素直に頷いたラスは、デスの膝の上ですやすや眠っているルゥを受け取って絨毯を敷いたコハクに笑いかけた。
「コー、心配してくれてありがとう。でも私つわりも全然なくて、本当にお腹に赤ちゃんが居るのかなあ?」
「間違いねえよ。つわりはこれからかもしんねえし、とにかく激しい運動禁止!…あ、俺は激しい運動したいんだけど我慢…」
「激しい運動?それってどんな運動?」
「それはさあ……いでででっ!」
にやにやしっぱなしの色ぼけ魔王がラスに妙なことを吹きこまないようにとコハクの耳を引っ張ったリロイは、瞳を尖らせて無言の抗議をした。
その間に女性陣はごろんと横になると、生い茂った木々の間から見える満天の星と、妖精たちが放つ燐光に見惚れてうっとりしていた。
「綺麗…。こんな綺麗な世界があるなんて…」
「うん、本当はここって人間が入ってこれない所なんだよね。ベルル、押しかけてきちゃってごめんね」
「いいのよ、コハク様は顔パスだし、あなただってもうみんなに受け入れられてるわ。いつだって遊びに来ていいのよ」
「うん!またすぐ遊びに来るから。ね、コー」
「ああそうだな。さあて寝るぞー。チビ、もうちょっとこっち来いって」
コハクがラスを抱き寄せて、リロイがティアラを抱き寄せる。
デスはしがみついて離れないルゥを抱っこしてラスにぴったり寄り添って眠り、そして――
「…呼んでないが、来たのか」
『お前に会いに来たんじゃない。子を案じて来ただけだ』
皆が寝静まった頃にのそりと現れた真っ黒で大きなドラゴンは、言葉とは裏腹にグラースを包み込むようにして座ると、金色の瞳を閉じる。
グラースはドラちゃんのあたたかい身体に包まれて、眠りについた。