魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「ああ、またあの娘の声が聞こえた」
聖なる場所――神の座す楽園にて、楽園の主がそう呟いて微笑んだ。
清らかで神聖な湖の前で瞑想していた主の微笑に、周囲の者たちが一斉に笑みを返す。
「またあの娘か。金の髪に緑の瞳の…」
「そうだね、以前私に何年も粘り強く呼びかけ続けていた娘だよ。ふふ、また可愛い願いだな」
楽園の主――神のすぐ傍に座っていた金の髪と藍色の瞳をした絶世の美貌の男は、腕を組んではじめて会った時のことを回想した。
「愛しい男との再会を切に願って叫び続けていた。で、今回も願いを叶えてやる、と?」
使いの者の含み笑いに頬を緩めた神は、足元に咲いていた碧い花を一輪摘んで香りを楽しむと、春風のそよぐ空を見上げた。
「そうだね、あの娘の声は他の者たちの声よりもよく届く。娘の妊娠を願うか。可愛い娘が産まれるだろう。だがもう少し様子を見てみようか」
「そうだな、俺もその方がいいと思う。しかしあの黒い男と夫婦か…今ひとつ想像できなかったが、幸せに暮らしているようでよかった」
「ふふ、私たちはまるであの娘の親のような気分になっているようだな。それと後はあの死神か」
一度この楽園へ招いた死神は、表情ひとつ動かさない男だった。
だが今はどうだろうか?
幼子に指を吸われて僅かに微笑んでいるあの男は、ここに招いた死神と同じだろうか?
真っ黒なローブを脱いで、人に見られたくなかった顔をさらしているあの男は、同じだろうか?
「あの男も、そろそろ変化する。役割を果たし、包み込んでいた殻を破って、そして…そうか……ふふふ」
神にしか見えない十数年後の光景。
珍しく声に出して笑っている神をこよなく愛する神の使いたちも一緒に笑い声を上げた。
そんな中もちろん話題に上っていることを知らないラスは、ドラちゃんの背中を滑り台にしてルゥと一緒に遊んでいた。
聖なる場所――神の座す楽園にて、楽園の主がそう呟いて微笑んだ。
清らかで神聖な湖の前で瞑想していた主の微笑に、周囲の者たちが一斉に笑みを返す。
「またあの娘か。金の髪に緑の瞳の…」
「そうだね、以前私に何年も粘り強く呼びかけ続けていた娘だよ。ふふ、また可愛い願いだな」
楽園の主――神のすぐ傍に座っていた金の髪と藍色の瞳をした絶世の美貌の男は、腕を組んではじめて会った時のことを回想した。
「愛しい男との再会を切に願って叫び続けていた。で、今回も願いを叶えてやる、と?」
使いの者の含み笑いに頬を緩めた神は、足元に咲いていた碧い花を一輪摘んで香りを楽しむと、春風のそよぐ空を見上げた。
「そうだね、あの娘の声は他の者たちの声よりもよく届く。娘の妊娠を願うか。可愛い娘が産まれるだろう。だがもう少し様子を見てみようか」
「そうだな、俺もその方がいいと思う。しかしあの黒い男と夫婦か…今ひとつ想像できなかったが、幸せに暮らしているようでよかった」
「ふふ、私たちはまるであの娘の親のような気分になっているようだな。それと後はあの死神か」
一度この楽園へ招いた死神は、表情ひとつ動かさない男だった。
だが今はどうだろうか?
幼子に指を吸われて僅かに微笑んでいるあの男は、ここに招いた死神と同じだろうか?
真っ黒なローブを脱いで、人に見られたくなかった顔をさらしているあの男は、同じだろうか?
「あの男も、そろそろ変化する。役割を果たし、包み込んでいた殻を破って、そして…そうか……ふふふ」
神にしか見えない十数年後の光景。
珍しく声に出して笑っている神をこよなく愛する神の使いたちも一緒に笑い声を上げた。
そんな中もちろん話題に上っていることを知らないラスは、ドラちゃんの背中を滑り台にしてルゥと一緒に遊んでいた。