魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ちゃんとした普通の馬が引く大型の馬車を用意したコハクは、庭で動物たちと戯れているエンジェルを呼び寄せると再び小言を口にした。


「エンジェル、知らない人に話しかけられても喋っちゃ駄目だからな。あとキャンディとかあげるっていわれても…」


「うん、パーパ」


こっくり頷いてにっこり笑って抱き着いてきたエンジェルに感無量のコハクは、そのままエンジェルを抱っこして馬車に乗り込ませると、シエルから遠い席に座らせてさらに注意。


「あいつにも注意だからな」


「シエルのことー?パーパ…シエルはお友達だよ?」


「今はお友達でもそうじゃなくなるかもしれないから言ってるの!」


「?」


ぽかんとしているエンジェルにこれ以上説明しても無理だというのは幼い頃のラスで承知済みのコハクは、ルゥとリィを呼び寄せてひそひそと命令を下す。


「俺たちのエンジェルを守りきるんだぞ、いいな?チビ勇者ども」


「うん!エンジェルもママも俺たちが守るんだ!」


固い結束が生まれた男たちは拳を突き合せると、動き出した馬車に歓声を上げているエンジェルとラスに目をやってでれっと鼻の下を伸ばした。


そして元々あまり喋らないデスとシエルは各々が好き勝手に動いていて、シエルと言えば馬車が動き出すとすぐ屋根の上に上って日向ぼっこをしている。

こういうところは父親譲りなのか…とにかく高い所に上る癖があり、またそれをエンジェルが真似しようとするのでコハクをはらはらさせていた。


だが今回はシエルよりも初のプチ旅行ということでテンションが上がっているエンジェルは、窓にへばりついてずっと外を見ている。

はじめてラスと旅をした時もこんな感じだったなと再び感無量になったコハクは、ラスを膝に乗せて不安を口にした。


「俺…エンジェルを誰にも取られたくない…」


「まだ6歳だよ?コーの心配性」


「チビに似てあんなに可愛いんだから心配にもなるっつーの。ああわかってたことだけど…俺…ハゲそう…」


「コーがハゲたらかつらを買ってあげる」


嬉しいんだかそうでないんだか…

なんだか複雑な気分になったコハクは、髪の毛の心配をしつつまだ幼いエンジェルがあと20年は傍に居てくれますようにと願った。
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