魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
「エンジェルが心臓が痛いって」
常に率直な物言いをするシエルがエンジェルを抱っこしてコハクの元に戻ると、それを聞いて顔色を変えたコハクはエンジェルの金色の髪に優しく触れて顔を覗き込んだ。
「エンジェル?!心臓が痛いって…病気か!?」
「わかんない…。でもすぐ治ると思うから…」
「でも治らなきゃ大変だろ、今すぐグリーンリバーに戻って…」
「パーパ、大丈夫だから。…パーパ、抱っこして」
言われるがままにコハクがエンジェルを抱っこした時、森の散策に出ていたラスとデスが戻って来た。
手には可愛らしい小さなピンクの花を一輪持っていて、ラスはそれを顔を伏せて上げないエンジェルの耳元に飾って笑いかけた。
「エンジェルにあげる。きっと似合うと思って探してきたんだよ」
「……マーマ……ありがとう…」
まさか自分のためだとは――と思っていなかったエンジェルは、理由がわからないながらも母親を少し嫌いになってしまいそうになっていた自分を責めて、今度はラスに手を伸ばして抱っこしてもらう。
「もお、エンジェルは大きくなったんだからママ長い間抱っこできないよ?よいしょ、大きくなったねえ」
いつまでも美しい母親――
自慢の母親にそっくりだと言われる度に嬉しくて仕方なかったのに、妙な感情を抱いてしまったエンジェルは、ラスに謝り続けた。
「マーマ…ごめんなさい。ごめんなさい」
「どうしたの?何か悪いことをしたの?悪さをするのはお兄ちゃんたちだけでいいからね」
「ま、ママ!俺たち悪いことなんてしてないよ!」
…本当はしているのだが、ラスに怒られたくない一心で兄たちが声を上げるとラスは笑ってデスに声をかけた。
「デス、抱っこしてあげて」
「……うん」
「…やっ。パーパ、抱っこしてっ」
エンジェルがデスの抱っこを嫌がったのは、これがはじめてのことだ。
驚いた面々が目を丸くしていると、デスはしばらく考えてエンジェルの頭をよしよしと撫でて木の幹に寄りかかって座った。
「エンジェルったらどうしちゃったの?ママが何でも聞いてあげるからね」
「うん。マーマ…ごめんなさい…」
とにかく、謝り続けた。
常に率直な物言いをするシエルがエンジェルを抱っこしてコハクの元に戻ると、それを聞いて顔色を変えたコハクはエンジェルの金色の髪に優しく触れて顔を覗き込んだ。
「エンジェル?!心臓が痛いって…病気か!?」
「わかんない…。でもすぐ治ると思うから…」
「でも治らなきゃ大変だろ、今すぐグリーンリバーに戻って…」
「パーパ、大丈夫だから。…パーパ、抱っこして」
言われるがままにコハクがエンジェルを抱っこした時、森の散策に出ていたラスとデスが戻って来た。
手には可愛らしい小さなピンクの花を一輪持っていて、ラスはそれを顔を伏せて上げないエンジェルの耳元に飾って笑いかけた。
「エンジェルにあげる。きっと似合うと思って探してきたんだよ」
「……マーマ……ありがとう…」
まさか自分のためだとは――と思っていなかったエンジェルは、理由がわからないながらも母親を少し嫌いになってしまいそうになっていた自分を責めて、今度はラスに手を伸ばして抱っこしてもらう。
「もお、エンジェルは大きくなったんだからママ長い間抱っこできないよ?よいしょ、大きくなったねえ」
いつまでも美しい母親――
自慢の母親にそっくりだと言われる度に嬉しくて仕方なかったのに、妙な感情を抱いてしまったエンジェルは、ラスに謝り続けた。
「マーマ…ごめんなさい。ごめんなさい」
「どうしたの?何か悪いことをしたの?悪さをするのはお兄ちゃんたちだけでいいからね」
「ま、ママ!俺たち悪いことなんてしてないよ!」
…本当はしているのだが、ラスに怒られたくない一心で兄たちが声を上げるとラスは笑ってデスに声をかけた。
「デス、抱っこしてあげて」
「……うん」
「…やっ。パーパ、抱っこしてっ」
エンジェルがデスの抱っこを嫌がったのは、これがはじめてのことだ。
驚いた面々が目を丸くしていると、デスはしばらく考えてエンジェルの頭をよしよしと撫でて木の幹に寄りかかって座った。
「エンジェルったらどうしちゃったの?ママが何でも聞いてあげるからね」
「うん。マーマ…ごめんなさい…」
とにかく、謝り続けた。