魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
グリーンリバーにはエプロン姿の魔物たちが住んでいるので、ルゥたちも魔物に対する抵抗感はかなり少ない。

だが彼らに悪意は全くなく、だがグリーンリバーから一歩出ると悪意むき出しで向かってくる魔物は少なくない。


父親は魔法使いで、母親は大国のお姫様だった人。

父親は少々乱暴気味で、いきなり魔物の大群の中に放り込まれたことも何度もある。

ルゥとリィはコハクの遺伝子を受け継いで魔法を使えるが、エンジェルはその片鱗を見せたことがない。

故にルゥとリィは、あまり背の伸びない小さな妹を絶対に守らなければという強い使命感を持っていた。


「エンジェル、お兄ちゃんたちが隣に寝てあげるから」


「うん」


色よい返事が返ってきたので殊更有頂天になった兄弟は、シエルと紐を使って手遊びしているエンジェルを見つめ続ける。

コハクと言えばラスを膝に乗せて構ってもらうのに必死で、デスは膝を抱えて座りながら窓の外を見ていた。


「よーし、陽が暮れる前にテント張るぞ~。でももうちょっと行けば村があるんだけど…いいのか?」


「うん、野営楽しいし私は好き。ルゥたちはいや?」


「ううん、俺たちも野営したい!パパ早くテントセット!」


ようやく“魔王”呼ばわりから“パパ”と言ってもらえるようになったコハクは、陽が傾き始めたので馬車を止めて外に出ると、デスとグラースと共に安全確認を行った。

シエルといえば、また木の上。

そしてその木の下でぴょんぴょん跳ねているエンジェル。

毎度の光景で、ルゥとリィはテントを張りつつエンジェルとラスから目を離さずにてきぱきと手を動かす。


「シエルー、私もー」


「うん」


ひらりと飛び降りてきたシエルがラスを抱っこして木の上に戻ろうとすると、コハクが一喝。


「こらこっちに戻って来い!エンジェル、パパと山菜とかキノコ採りに行こう」


「コー、私も…」


「チビはカラフルなキノコばっか採ってくるから待機!チビ勇者共、ちゃんと守れよ!」


「了解!」


ぷうっと頬を膨らませるラスに萌えつつエンジェルの手をしっかり握って森の中に入って行ったコハクは、ラスそっくりのエンジェルにも萌えに萌えていた。
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