魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
たき火を囲んで夕食を採っている間、はしゃぎ疲れたエンジェルはデスの膝に抱っこされてうとうとし始めていた。


デスの膝はとても安心するらしく、コハクが居ない間は必ずデスの膝に座っている。

ラスと同じ金色の髪を優しい手つきで撫でているデスにコハクがぎりぎり歯ぎしりをしていると、ラスにくっついて同じようにうとうとしているルゥとリィを抱き寄せてやったラスは、ふんわりと微笑んだ。


「今日はデスと一緒に寝かせてあげよっか」


「反対!絶対!」


「私たちも同じテントなんだからいいでしょ?コー、今から変な心配してるとハゲちゃうよ?」


女の子を待ち望んでようやく生まれてきたエンジェルを猫可愛がりしているコハクにとっては、デスは絶対的なライバルだ。

デスについて回るエンジェルを叱ることもできず、ついデスに八つ当たりをしてしまうのだが、そうなればラスに怒られてしまう。

八方塞状態できりきりする毎日が続いているので本当にハゲてしまうのでは…と自分自身も思ってしまったコハクは、ルゥとリィをそれぞれ脇に抱えてテントの中へ入った。


「俺のエンジェルが…」


ふたりを寝かしつけてぐすぐすぐずっていると、続いてデスがエンジェルをお姫様抱っこして入って来るなりコハクにエンジェルを抱っこさせた。


「なんだよお前が抱っこして寝るんだろが」


「………俺は……いい…」


「はあ?お前まさか…エンジェルじゃなくてチビを抱っこして寝ようとしてるんじゃ…!」


そうなると全力で戦うつもりのあるコハクが瞳を真っ赤に輝かせて憤りかけると、デスはテントの隅でころんと横になって身体を丸くした。


「ちっ、俺を悪者扱いしやがって…。ま、悪だったんだけどさー」


「コー、子供たちは寝た?私も眠たくて眠たくて…」


シエルを抱っこしたグラースと戻って来たラスは、すでにうとうと。

一瞬のうちに限りなく思案したコハクは、やむを得ずエンジェルを寝転んでいるデスの腕の中に抱かせると、ぶつぶつ不満を口にしながら自らはラスをしっかり抱っこして寝転んだ。


「あと10年は…いやいやいや、ずっと嫁には出さねんだからな」


そんなコハクの呟きを耳にしたデスは、エンジェルをしっかり腕に抱き込んで毛布に包まった。
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