魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスを腕に抱いて寝たのもどれ位ぶりか――
あどけない寝顔は小さな頃から変わらないままで、眠っているラスの頬に何度もキスをして寝顔を見つめ続けた。
子供を授かって半年が経ったが、はじめての育児で不安もある中仕事が立て込んで傍に居てやれずに、新婚旅行も行くことができずに不満もあっただろう。
それをとうとう口にしたということは、やはり寂しさの限界に来ていたということ。
「ったく…変なとこで我慢しちまうんだよな、チビは…。どこに連れて行ってやろうかな…。ここはあったかいから…寒いとこと暑いとこか」
「んん……コー……むにゃ…」
寝言で名を呼ばれて嬉しくなったコハクは、ラスの甘い匂いと体温に溺れながら眠りに落ちてゆく。
そして翌朝何やらがさがさと音が聞こえて目が覚めると、隣に寝ていたはずのラスは、ふかふかの絨毯の上に座り、白いキャリーバッグにドレスや下着を詰め込んでいた。
魔法でラスの影の中に服などを入れて取り出すこともできるのに、敢えてキャリーバッグに荷物を詰めているのは、旅行気分を味わいたいからだろう。
いつもならドラちゃんやケルベロスでひとっ飛びで旅行気分もへったくれもないので、どれだけラスが新婚旅行を楽しみにしているかを強く感じられた。
「チービー、もう荷物詰めてんのか?俺の分は入りそうか?」
「うん、コーの分はもう1つの方のキャリーバッグね。そっちにルゥのベビー服やミルクも入れておくから。コーはお仕事全部終わらせてきてね、後は私に任せといてっ」
「ん、わかった。じゃあチビに任せた」
「うん、わかった」
任されて嬉しそうににこっと笑ったラスの隣に座ってつむじにキスをしていると、ドアがこっそりと開いた。
ゆっくりとした動作で中へ入って来たのは、コハクと同じく全身を真っ黒な服で統一した死神…デスだ。
絨毯一面に散らばった服をキャリーバッグを見て数分考えた結果、元々垂れた目をもっと垂れさせて、ラスの前に膝を抱えて座った。
「……俺も……行きたい…」
「だーめー!お前なに新婚旅行について来ようとしてんだ!駄目!絶対!」
「…新婚…旅行…?」
「うん、やっと新婚旅行に行けるの。デス、お土産沢山買ってくるから楽しみにしててね。あ、私観光のパンフレット貰ってこようっと」
「あんまうろうろして心配させんなよ。じゃあ俺行って来る。さよならお預けの日々!」
気合いを入れたコハクが部屋を出て行き、残ったデスはきらきらした表情で荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んでいるラスの頭を撫でてから、ルゥを抱っこしてあやしてやった。
ラスの笑顔を見れることが、幸せ。
ラスはコハクにしか幸せにすることができない。
ここに戻って来る時はきっと、輝かんばかりの笑顔で戻って来ることだろう。
それを、待つことにした。
あどけない寝顔は小さな頃から変わらないままで、眠っているラスの頬に何度もキスをして寝顔を見つめ続けた。
子供を授かって半年が経ったが、はじめての育児で不安もある中仕事が立て込んで傍に居てやれずに、新婚旅行も行くことができずに不満もあっただろう。
それをとうとう口にしたということは、やはり寂しさの限界に来ていたということ。
「ったく…変なとこで我慢しちまうんだよな、チビは…。どこに連れて行ってやろうかな…。ここはあったかいから…寒いとこと暑いとこか」
「んん……コー……むにゃ…」
寝言で名を呼ばれて嬉しくなったコハクは、ラスの甘い匂いと体温に溺れながら眠りに落ちてゆく。
そして翌朝何やらがさがさと音が聞こえて目が覚めると、隣に寝ていたはずのラスは、ふかふかの絨毯の上に座り、白いキャリーバッグにドレスや下着を詰め込んでいた。
魔法でラスの影の中に服などを入れて取り出すこともできるのに、敢えてキャリーバッグに荷物を詰めているのは、旅行気分を味わいたいからだろう。
いつもならドラちゃんやケルベロスでひとっ飛びで旅行気分もへったくれもないので、どれだけラスが新婚旅行を楽しみにしているかを強く感じられた。
「チービー、もう荷物詰めてんのか?俺の分は入りそうか?」
「うん、コーの分はもう1つの方のキャリーバッグね。そっちにルゥのベビー服やミルクも入れておくから。コーはお仕事全部終わらせてきてね、後は私に任せといてっ」
「ん、わかった。じゃあチビに任せた」
「うん、わかった」
任されて嬉しそうににこっと笑ったラスの隣に座ってつむじにキスをしていると、ドアがこっそりと開いた。
ゆっくりとした動作で中へ入って来たのは、コハクと同じく全身を真っ黒な服で統一した死神…デスだ。
絨毯一面に散らばった服をキャリーバッグを見て数分考えた結果、元々垂れた目をもっと垂れさせて、ラスの前に膝を抱えて座った。
「……俺も……行きたい…」
「だーめー!お前なに新婚旅行について来ようとしてんだ!駄目!絶対!」
「…新婚…旅行…?」
「うん、やっと新婚旅行に行けるの。デス、お土産沢山買ってくるから楽しみにしててね。あ、私観光のパンフレット貰ってこようっと」
「あんまうろうろして心配させんなよ。じゃあ俺行って来る。さよならお預けの日々!」
気合いを入れたコハクが部屋を出て行き、残ったデスはきらきらした表情で荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んでいるラスの頭を撫でてから、ルゥを抱っこしてあやしてやった。
ラスの笑顔を見れることが、幸せ。
ラスはコハクにしか幸せにすることができない。
ここに戻って来る時はきっと、輝かんばかりの笑顔で戻って来ることだろう。
それを、待つことにした。