魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ペンションの周囲には風景を邪魔しない程度にココヤシの木が生い茂り、大きなヤシガニが砂浜をのしのし歩いている姿にルゥが奇声のような歓声を上げて喜ぶ。

コハクは目を離すとすぐに居なくなってしまうラスを抱っこして部屋を見て回り、そしてバスルームが全面ガラス張りになっているのを見て、大コーフン。


「全面ガラス張りじゃん!隠れるとこ無し!サイコー!」


「わあ、すごい!コー、後で一緒に入ろうね」


「ありがとうございます!」


うきうきしているラスの緑の瞳はきらきら輝き、抱っこされたままコハクの頭を抱いて抱き着いた。

ルゥを出産したことでいつもより大きくてふかふかぐにゃぐにゃの胸に包まれてコーフンの臨界点に達した色ぼけ魔王が床にラスを押し倒そうとすると、ルゥがぴいぴい泣いたのでラスがコハクの頬を思いきり押して立ち上がり、ささっと居なくなる。


「あーちきしょっ、ルゥが邪魔しけりゃ………まあいっか、ハネムーンはこれからこれから」


「コー、ルゥのおしめ持ってきてーっ」


「はいはいただいまー」


コハクは器用で手際がいい。

替えのおしめを用意するとルゥの前に座り、てきぱきおしめを替えてラスを嫉妬させた。


「コーはなんでもできて羨ましい。ルゥも全然嫌がらないし…私がやろうとするとぐずるんだもん」


「実はさあ、チビが赤ちゃんの時に何度かこっそりおしめ替えたことがあってさ。こういうのはお手のもの……チビ?」


「こ、コーの馬鹿!ヘンタイ!私のおしめを替えたこともあるのっ!?やだ、あっち行って!」


「やだねー、ヘンタイなのも否定しねえけど、あん時もチビはルゥみたいに大人しかったぜ。俺の目をじっと見て笑っててさあ」


ラスにぐいぐい肩を押されて非難されたが、恥ずかしがるラスにも十分萌えることのできるヘンタイ魔王は、気持ちよさそうに息をついたルゥを膝に乗せて大きな窓から絶景を眺めた。


「かーわいかったなあ。や、今も可愛いんだけど。またチビみたいな女の子のおしめ替えたいなー。どういう意味か…わかるよな?」


「う、うん…また赤ちゃんが欲しいんでしょ?じゃあコー、一緒に頑張ろうね。私は男の子でも女の子でもいいけど」


「生み分け法の本を熟読したから大丈夫!よーし、今夜は…ふふふふふ」


不気味な笑い声を発しているコハクを無視したラスは、運び込んだキャリーバッグを開けて水着を取り出した。
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