魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ルゥをあやしてやりながらも、ラスがキャリーバッグから水着を取り出したのを横目で盗み見していた魔王…内心狂喜乱舞。


尻尾が生えていたならばきっとちぎれんばかりに振られていたであろう感情をおくびにも出さずに見ていないふりをすると、ラスが淡いピンク色のビキニをさっと後ろ手に隠して立ち上がった。


「私2階を見て来るね、コーはここでルゥとゆっくりしてて」


「了解。勝手に出て行ったりしたらものすごく怒るからな」


今までラスを本気で怒ったことはないのだが、一応そう言ってみると、ラスはにこっと笑って階段を軽やかな足取りで駆け上がって行った。

その直後…コハクはルゥを抱っこしたままソファに寝転んで悶絶。


「あの水着を着るんだよな!?うわあ、めっちゃ楽しみ!なんか…結構際どい角度のビキニだったけど…いやいやいや待て待て俺。張り切んな俺。今は我慢!」


「あうぅ?」


自問自答、そして自身と格闘しているコハクにルゥがきょとんとした顔で見上げてくる。

コハクははいはいをして歩き回るルゥを四つん這いになりながらついて行って遊んでやりながら、うきうきわくわくが止まらなかった。


「こ、コー…」


「ん?……ち、チビ…ど、どした?その格好……もう水着を着たのか?み、みみ、見せてみろよ」


「でもなんか…サイズを間違えたかも…」


「いいから見せてみろって」


瞬間移動したかのようにラスの前に立ったコハクは、バスタオルで身体を隠して恥ずかしがっているラスにきゅんきゅんしながら諭し続けた。

それで意を決したのか――ラスがばさりとバスタオルを落とすと…


そこにはパラダイスが。


「…!!!!なんだこれ!ち、チビ…めっちゃ可愛いじゃん!めっちゃ似合ってんじゃん!そ、その…サイズ間違えたっていうのは…トップのことか?」


「ちゃんと測ってもらったはずなんだけど、なんか小さくない?それとも私の胸が大きくなったのかなあ」


「ま、まあほら…俺とルゥしか見てねえし…むしろトップつけずに泳ぐっていうのも…」


「やだ。はじめての水着なんだから!ルゥ、泳ぎに行こっか」


「だあ」


――水着のトップはラスの大きな胸がちゃんと収まりきれずに胸の谷間が思いきり強調されていた。

もちろん一部始終余すことなくばっちり見たコハクは、ラスに手渡された海パンを受け取りつつ、頭がぼうっとして気絶寸前。


「コー、先に行ってるね。ルゥ、行こっ」


ラスの真っ白で露わになった背中に大コーフン。

つまり何をしても、ラスには大コーフン。
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