魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
デスは、コハクやラスと離れている時は黒いマントに身を包み、ラスから貰った黒い手袋をして骨の指を隠している。

2人と一緒に居る時は安心できてマントを着る機会は死神としての仕事を遂行する時だけにしていたのだが――離れた途端、姿を見られたくなくて再びマントを着るようになっていた。


デスは雲ひとつない空を見上げて瞳を細めると、フードを深く被り直しつつ目の前に立ったラスの露わな姿に釘づけになっていた。


「ゆっくりしてたのに急に呼び出しちゃってごめんね?もお、コーったら」


「だーって、ルゥが気になって泳げねえんだろ?せっかく海で泳げるんだから、堪能したいじゃん!」


「………ラス……綺麗…」


何故か自然と手がラスの胸のあたりに伸びようとしたデスの手を掴んだコハクはにっこりしつつ、ぼそり。


「触んな。どこ触ろうとしてんだ、殺すぞ」


「…………子守り…」


――とにかく暑い。

全くといっていいほど暑さに弱い死神がビーチパラソルの下に居るルゥの元へ行くと、退屈そうに脚を上げたり下げたりしていたルゥの赤い瞳が一際大きくなって輝いた。


「あぶぅぅ!」


喜んで声を上げるルゥを抱っこしたデスがビーチパラソルの下に座り、ラスが砂浜を歩くカモメを楽しそうに追いかける。

細い手足、腰――

ドレスを着ている時のラスは人形のように綺麗だけど、ドレスを着ていないラスは…またデスの身体に妙な現象を起こしていた。


「やべえ、俺の天使ちゃんが可愛すぎる!ぷりんぷりんすぎる!!…おいデス、そのマントよこせ!コーフンしてんのがバレるじゃねえかよ!」


「………いやだ…。…俺だって……」


「俺だって…なんだよ。お前まさかチビにコーフンしてんじゃねえだろな!ちょっとマント脱げ!見せてみろ!」


はたから見れば明らかにコハクがデスのマントを脱がせようとしていて、いじめているように見える。

ラスはUターンをして腰に両手をあてて“めっ”と言って2人を叱った。


「喧嘩は駄目。デス、少しだけ子守りをお願いね。お礼は私が作るご飯でいい?大したものは作れないけど…」


「……食べ、たい……。…俺…子守り…頑張る…」


にこっと笑ったラスが膨れっ面のコハクの手を引っ張って海へと入って行く。

デスは瞬きもせずにへらっと笑って見つめてくるルゥに早速指をおしゃぶりされながら、見慣れないラスの水着姿に見入っていた。
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