魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
デスの指をちゅうちゅう吸っているルゥは超ご機嫌で、デスの抱っこはお世辞にも上手とは言えないのだが、それでも時々大きな声を上げて喜んでいた。

ラスはコハクと一緒に海を泳いでその美しさに感動し、疲れて手足が動かなくなるまで泳ぎまくって浮き輪に捕まった。


「楽しいっ。コー、もっと泳ごうよ!」


「いーや、こんなにはしゃいで泳いでたら明日は筋肉痛になって泳げねえかもしんねえぜ。ほらチビ、俺の上に乗れよ。ボートになってやっから」


「うん、わかった」


コハクが仰向けになるとぷかりと浮かび、ラスはラッコのようにコハクの上に乗ったのだが、コハクは沈むことなく浮かんだままだ。

楽しくなってコハクの胸にしなだれかかってよく出た喉仏をいじりながら、真夏の太陽が肌をじりじり焼くのがわかって、日焼けしたコハクを想像してみた。


「コーの日焼けしてる姿が想像できないよ。ちゃらちゃらして見えるのかも」


「ひどいぞチビ!俺だってチビがこんがり焼けてる姿想像できねえし。……いや、それもイイ!だけど白いチビの方がイイ!これ以上焼けねえために上がるぞー、ルゥが腹空かせてるだろ」


「あ、そうだ、お乳あげなきゃ!コー、今夜はデスに泊まっていってもらおうよ。張り切ってご飯作るから」


「えー!?チビと2人きりがいい!飯食わせたら追い出そう!な、いいだろ?」


疲れ切って脚がふらふらしているラスを抱っこして海から上がると、ルゥはデスの腕の中ですやすや眠っていた。

嫉妬したコハクはデスからルゥを奪い取ってラスに抱かせると、ラスはおもむろにトップをずらしてデスの前でお乳をあげようとしたので、魔王、大慌て。


「あーーーっ!!おいデスこっちに来い!なあ、なんか変わりはねえか?ねえとは思うけど一応聞いておかねえとな」


「…………………ない」


「なんだその溜めは。なんかあったっていうのかよ」


ルゥにお乳をあげているラスの姿を見せまいと、デスの肩を抱いて身体の向きを無理矢理変えさせると、デスはぼんやりしながら空を見上げて、首を振った。


「……………ない」


「まあいいけど。今日は助かったよ。チビの美味い飯食って帰れよ。グリーンリバーを任せたぞ」


任されて頼られたデスは、元々下がっている目尻をさらに垂れさせて少し微笑むと、やはりあのことは言わないでおこうと決めて美しい海を見つめた。
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