魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
夜のさざ波の音は日中とは違う気がする。

とても穏やかな波の満ち引きの音葉とても心地よく、小さなランタン1つとワインとチーズをバスケットに入れて砂浜に座ったコハクとラスは、チーズを分け合って食べると、笑い合った。


「まっさかデスがこんなに長居するとはなー。さっさと帰すつもりだったんだけど」


「でも久しぶりに会えて嬉しかったよ。ねえコー、ルゥちゃんもう寝た?さっきお腹いっぱいお乳あげたからもう大丈夫だよね?」


「なんだ?あー、ワイン飲みてえんだな?ちょっとだけだぞ」


小さなワイングラスに少しだけ赤ワインを注いでラスに渡すと、ラスはそれを舐め取るようにちびちびと飲んで顔を輝かせる。


「これ美味しいっ。グリーンリバーの近くにも海はあるけど、こことは違う感じ。どうして?」


「あっちは寒いからなあ。なんか寒々した感じだし、こんな風にヤシガニが歩いたりしてねえしな。夏になるとそれなりに泳いでる奴らも出て来るけど、こっちの方が海っぽいだろ?」


「うん。リロイやティアラたちと一緒に来たかったな。今度また一緒にここに遊びに来てもいい?」


「ん、もちろん。チビ、空を見てみろよ」


言われて空を仰ぐと、船の上から見た星空とはまた違い、まさに星が降り注いできそうな位に近く感じた。

時折流れ星が空を走り、ラスは胸の前で両手を組み合わせて必死にお願いをしていたので、コハクはラスの肩を抱きながら顔を覗き込んだ。


「何をお願いしてんだ?」


「次こそはコーが楽しみにしてる女の子の赤ちゃんができますようにってお願いしたの」


「それって俺が頑張ればいいだけの話じゃね?そういうのは神様頼みじゃなくって…俺頼みだー!」


「きゃーっ!」


砂浜にラスを押し倒すと、覆い被さる形になったコハクは顔が赤くなるのを感じながら、暗闇でよかったと思ってラスの太股に手を這わせた。


「きゃんっ!こ、コー、太股撫でないでっ」


「か、可愛い声上げんな!緊張すんだろ!」


いい雰囲気なような、そうでないような――

毎回こういう雰囲気になってしまうので、2人共またそれを笑うと、ラスはコハクの背中に腕を回して密着させると、コハクの首筋にちゅっとキスをした。


「ああぁっ、爆発する!今すぐする!」


「していいよ、コー、ここで……」


誰も見ていない砂浜で、波の音に揺られながら唇を重ねた。

とても幸せな気持ちで、コハクの熱に身を委ねる。
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