魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
結婚したとしても、コハクの周りには誘惑が多い。
とにかく無駄に顔が整っているが、手を出してしまえば火傷だけでは済まされないような…
明らかに性格が悪そうな顔をしているが、街に繰り出したコハクの周囲には、常に遠巻きに女の人だかりができていた。
「よし、建設地はここでいいな?居住区の中にあるし、公園が近いし、ここに決めよう。お前ら、預かったガキたちに怪我なんかさせやがったらすぐ廃園だからな」
「はいっ!魔王様、色々ありがとうございました!」
深々と頭を下げた異形の姿の魔物たちに手を振って空を見上げた時には、すでに昼が過ぎていた。
居住区を抜けて繁華街に脚を向けたコハクは、そこでようやくきょろりと周囲を見回した。
きゃあ、と歓声が沸き、女たちが色めき立つ。
中には見栄えのする美しい女も居たが、コハクは冷めた瞳で視線を逸らすと、ぶらぶら歩きながらショーウィンドウに目を遣る。
明日からは新婚旅行に出かけるのだから、ラスに似合う服やアクセサリーでも買ってやろうと思って、イルカの形をしたサファイアの宝石がついたイヤリングを見つけて脚を止めていると、勇気を振り絞った金髪巻き毛のゴージャスな女が声をかけてきた。
「あ、あの…コハク…様ですよね…?」
「あ?なんだよ話しかけんな」
だが女はつれなくされてもめげずに、コハクの隣に立って誘うような目つきで見上げた。
「結婚式を見ました。それから私…コハク様のファンになったんです。後ろに居る子たちもです。あの…これから一緒にお茶でも…。夜までお暇なのなら、私たちがお相手に……」
女からの誘いにコハクの眉がぴくりと上がり、興味を持たせることに成功したと感じた女はコハクの腕に触れようとしたが――吊り上った唇にとても危険なものを感じて、伸ばした手を止めた。
コハクはゆっくりと身体を傾けて、女の耳元でぼそりと囁く。
「お前たちが束になってもチビ…俺の妻には適わねえ。結婚式を見たんだろ?まさか俺が浮気するとでも思ったか?チビよりも美しいと思ってんのか?」
「う……あぁ……」
蠱惑的な低い声で囁かれると、腰が砕けて座り込んでしまった女は、コハクの赤い瞳に魅了されて動けなくなってしまった。
…大抵の女はこうなるのだが…ラスだけは、違う。
誘惑しようとしてもいつもきょとんとしているし、ともすれば無視されることもあるほどに鈍感で可愛いラス。
「さ、これ買って帰るか。絶対チビに似合うだろうなー、喜んでくれるかなー」
ラスが喜んでくれる姿を想像してうきうきしたコハクは、女をその場に放置して店の中に入った。
その頃ラスは、ルゥを抱っこして街に繰り出していた。
とにかく無駄に顔が整っているが、手を出してしまえば火傷だけでは済まされないような…
明らかに性格が悪そうな顔をしているが、街に繰り出したコハクの周囲には、常に遠巻きに女の人だかりができていた。
「よし、建設地はここでいいな?居住区の中にあるし、公園が近いし、ここに決めよう。お前ら、預かったガキたちに怪我なんかさせやがったらすぐ廃園だからな」
「はいっ!魔王様、色々ありがとうございました!」
深々と頭を下げた異形の姿の魔物たちに手を振って空を見上げた時には、すでに昼が過ぎていた。
居住区を抜けて繁華街に脚を向けたコハクは、そこでようやくきょろりと周囲を見回した。
きゃあ、と歓声が沸き、女たちが色めき立つ。
中には見栄えのする美しい女も居たが、コハクは冷めた瞳で視線を逸らすと、ぶらぶら歩きながらショーウィンドウに目を遣る。
明日からは新婚旅行に出かけるのだから、ラスに似合う服やアクセサリーでも買ってやろうと思って、イルカの形をしたサファイアの宝石がついたイヤリングを見つけて脚を止めていると、勇気を振り絞った金髪巻き毛のゴージャスな女が声をかけてきた。
「あ、あの…コハク…様ですよね…?」
「あ?なんだよ話しかけんな」
だが女はつれなくされてもめげずに、コハクの隣に立って誘うような目つきで見上げた。
「結婚式を見ました。それから私…コハク様のファンになったんです。後ろに居る子たちもです。あの…これから一緒にお茶でも…。夜までお暇なのなら、私たちがお相手に……」
女からの誘いにコハクの眉がぴくりと上がり、興味を持たせることに成功したと感じた女はコハクの腕に触れようとしたが――吊り上った唇にとても危険なものを感じて、伸ばした手を止めた。
コハクはゆっくりと身体を傾けて、女の耳元でぼそりと囁く。
「お前たちが束になってもチビ…俺の妻には適わねえ。結婚式を見たんだろ?まさか俺が浮気するとでも思ったか?チビよりも美しいと思ってんのか?」
「う……あぁ……」
蠱惑的な低い声で囁かれると、腰が砕けて座り込んでしまった女は、コハクの赤い瞳に魅了されて動けなくなってしまった。
…大抵の女はこうなるのだが…ラスだけは、違う。
誘惑しようとしてもいつもきょとんとしているし、ともすれば無視されることもあるほどに鈍感で可愛いラス。
「さ、これ買って帰るか。絶対チビに似合うだろうなー、喜んでくれるかなー」
ラスが喜んでくれる姿を想像してうきうきしたコハクは、女をその場に放置して店の中に入った。
その頃ラスは、ルゥを抱っこして街に繰り出していた。