魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
その頃グリーンリバーでは、街の見回りをしていたグラースがふいに何かの気配を感じたような気がして空を見上げた。
相変わらずの春の季節で、街はどんどん発展してゆくばかりだ。
そんな中、春風に交じって肌にまとわりつくような不気味な視線のようなものを感じたグラースは足早に城に戻り、剣の鞘に手をかけていた。
「死神はどこだ?」
大抵はキッチンで食べ物を漁っているか自室で寝ていることが多いのだが、今日に限ってどこにも居ない。
空から降ってくる不気味な気配の正体を探るために螺旋階段を駆け上がったグラースは、屋上で巨体を横たわらせて寝ているドラちゃんのとげとげの尻尾を思いきり踏みつけた。
『何をする』
「妙な気配を感じる。お前も一緒に探せ」
『俺はベイビィちゃんと不本意ながら魔王の命令しか聞かない』
「私はその2人から留守を任された。この街に何かあればどうなる?お前はきっとラスに嫌われて背中に乗ってもらえなくなるだろうな」
女性にしては切れ長の瞳があざ笑うような光を湛えると、ドラちゃんはむくりと起き上がって口を大きく開いて威嚇した。
ぞろりと生えている牙の奥からは燃え上がる猛火が見えたが、グラースは一向に気した風もなくそんなドラちゃんの横を素通りすると、手すりの無い屋上に身を乗り出して眉根を寄せて空を見上げた。
ここにはコハクの結界が張られているので魔物の侵入を許したことはないが、今は緊急事態だと捉えている。
目を凝らしてまた身を乗り出した時、身体が傾いで屋上から落ちそうになったグラースの腰を支えた大きな男の手を見下ろした。
「助かったが…お前は誰だ?」
『ああ、この姿ははじめてだったな。俺はさっきまでそこで寝ていたドラゴンだ。確かに…異界の空気が混じっている』
「お前が…さっきのドラゴンか?…立派な男じゃないか」
――グラースを助けるために人型になったドラちゃんは、グラースでも見上げなければならないほどに大きな男だった。
肌の色は少し浅黒く、前髪が長くてよく顔が見えないが…かなりの美貌で、グラースはまだ抱かれたまま数センチ離れていない距離からドラちゃんの金色の瞳を覗き込んだ、
「お前…男前だな」
『お前も人にしてはなかなかだ。怪我をされると俺がベイビィちゃんに嫌われるかもしれない。俺も警戒しておくから動き回るな。じゃじゃ馬が』
腰から手を離してぷいっとそっぽを向いたドラちゃんの態度に燃えた女が1人。
彼女は…曲者の男が大好物だった。
相変わらずの春の季節で、街はどんどん発展してゆくばかりだ。
そんな中、春風に交じって肌にまとわりつくような不気味な視線のようなものを感じたグラースは足早に城に戻り、剣の鞘に手をかけていた。
「死神はどこだ?」
大抵はキッチンで食べ物を漁っているか自室で寝ていることが多いのだが、今日に限ってどこにも居ない。
空から降ってくる不気味な気配の正体を探るために螺旋階段を駆け上がったグラースは、屋上で巨体を横たわらせて寝ているドラちゃんのとげとげの尻尾を思いきり踏みつけた。
『何をする』
「妙な気配を感じる。お前も一緒に探せ」
『俺はベイビィちゃんと不本意ながら魔王の命令しか聞かない』
「私はその2人から留守を任された。この街に何かあればどうなる?お前はきっとラスに嫌われて背中に乗ってもらえなくなるだろうな」
女性にしては切れ長の瞳があざ笑うような光を湛えると、ドラちゃんはむくりと起き上がって口を大きく開いて威嚇した。
ぞろりと生えている牙の奥からは燃え上がる猛火が見えたが、グラースは一向に気した風もなくそんなドラちゃんの横を素通りすると、手すりの無い屋上に身を乗り出して眉根を寄せて空を見上げた。
ここにはコハクの結界が張られているので魔物の侵入を許したことはないが、今は緊急事態だと捉えている。
目を凝らしてまた身を乗り出した時、身体が傾いで屋上から落ちそうになったグラースの腰を支えた大きな男の手を見下ろした。
「助かったが…お前は誰だ?」
『ああ、この姿ははじめてだったな。俺はさっきまでそこで寝ていたドラゴンだ。確かに…異界の空気が混じっている』
「お前が…さっきのドラゴンか?…立派な男じゃないか」
――グラースを助けるために人型になったドラちゃんは、グラースでも見上げなければならないほどに大きな男だった。
肌の色は少し浅黒く、前髪が長くてよく顔が見えないが…かなりの美貌で、グラースはまだ抱かれたまま数センチ離れていない距離からドラちゃんの金色の瞳を覗き込んだ、
「お前…男前だな」
『お前も人にしてはなかなかだ。怪我をされると俺がベイビィちゃんに嫌われるかもしれない。俺も警戒しておくから動き回るな。じゃじゃ馬が』
腰から手を離してぷいっとそっぽを向いたドラちゃんの態度に燃えた女が1人。
彼女は…曲者の男が大好物だった。