魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ドラちゃんは基本的にいつも屋上に居る。
元々は精霊界の者なので普段はそちらで生活しているはずなのだが――最近は魔王に召喚されっぱなしで、グリーンリバーの屋上の主となっていた。
またドラゴン族の中では古代種にあたり、知能も人が及ばないほど高く、人語などいとも簡単に操ることができる。
ましてや人型になるなど息をするのも簡単だ。
実はまだこの姿を愛しいラスに見せていなかったのだが…不思議なことが起きていた。
『…俺に何か用か』
「いや、別に。男前を見ながら酒を飲みたいと思っただけだ」
とても久しぶりに人の姿になったドラちゃんは、ランプと酒を手に現れたグラースを金色の瞳で無機質に見つめた。
ラスと同じ金の髪と緑の瞳のグラースはベンチに座り、咲き乱れる金色の花を眺めている。
ラスと何が違うかと言われれば決定的にその妖艶な美貌とグラマラスな体形なのだが――ドラちゃんには興味がなかった。
グラースと比べればラスはちんちくりんだが、何せ精霊界でラスに手懐けられてからこっち、メロメロなのだ。
結果的にはかなり不本意ながらも魔王と契約を交わして傍に居ることができるようになったのだが――ラスは赤ん坊を生んでしまった。
『ちっ、ベイビィちゃんには俺の卵を生んで産んでもらうはずだったのに。…酒をよこせ』
「卵か。ドラゴンの男と人の女の間にはどんな子が産まれるんだ?」
興味津々に聞いてきたグラースの手から赤ワインのボトルを奪ってラッパ飲みしたドラちゃんは、そんな境遇に生まれた数少ない同胞を思って星空を見上げる。
大抵は人型で、肌が鱗のように硬質化して“化け物だ”と罵られて迫害される。
ドラゴンの雄は子を産ませたら共に子育てをすることもなくまた違う雌の所へ行って子作りに励む。
個体数がとても少なく出産率もとても低いのでそうせざるを得ないのだが、何故かドラゴンと人との間には子ができやすい…らしい。
『ドラゴンの方の血が濃ければ竜型にもなれる。大半は美しく強い子が産まれる。ああ、魔王と契約なんかするんじゃなかった。していなければ今頃ベイビィちゃんは俺の卵を産んでいたかもしれないのに』
「いや、お前は魔王に殺されていただろうな。あいつの嫉妬とラスへの執着は並じゃない。…しばらくはその姿で居ろ。私の部屋を一緒に使わせてやってもいい」
『お前の部屋に?意味がわからん。俺はここでいい。早く立ち去れ』
グラース、燃える。
つれなくされると余計に燃え上がるタイプだった。
元々は精霊界の者なので普段はそちらで生活しているはずなのだが――最近は魔王に召喚されっぱなしで、グリーンリバーの屋上の主となっていた。
またドラゴン族の中では古代種にあたり、知能も人が及ばないほど高く、人語などいとも簡単に操ることができる。
ましてや人型になるなど息をするのも簡単だ。
実はまだこの姿を愛しいラスに見せていなかったのだが…不思議なことが起きていた。
『…俺に何か用か』
「いや、別に。男前を見ながら酒を飲みたいと思っただけだ」
とても久しぶりに人の姿になったドラちゃんは、ランプと酒を手に現れたグラースを金色の瞳で無機質に見つめた。
ラスと同じ金の髪と緑の瞳のグラースはベンチに座り、咲き乱れる金色の花を眺めている。
ラスと何が違うかと言われれば決定的にその妖艶な美貌とグラマラスな体形なのだが――ドラちゃんには興味がなかった。
グラースと比べればラスはちんちくりんだが、何せ精霊界でラスに手懐けられてからこっち、メロメロなのだ。
結果的にはかなり不本意ながらも魔王と契約を交わして傍に居ることができるようになったのだが――ラスは赤ん坊を生んでしまった。
『ちっ、ベイビィちゃんには俺の卵を生んで産んでもらうはずだったのに。…酒をよこせ』
「卵か。ドラゴンの男と人の女の間にはどんな子が産まれるんだ?」
興味津々に聞いてきたグラースの手から赤ワインのボトルを奪ってラッパ飲みしたドラちゃんは、そんな境遇に生まれた数少ない同胞を思って星空を見上げる。
大抵は人型で、肌が鱗のように硬質化して“化け物だ”と罵られて迫害される。
ドラゴンの雄は子を産ませたら共に子育てをすることもなくまた違う雌の所へ行って子作りに励む。
個体数がとても少なく出産率もとても低いのでそうせざるを得ないのだが、何故かドラゴンと人との間には子ができやすい…らしい。
『ドラゴンの方の血が濃ければ竜型にもなれる。大半は美しく強い子が産まれる。ああ、魔王と契約なんかするんじゃなかった。していなければ今頃ベイビィちゃんは俺の卵を産んでいたかもしれないのに』
「いや、お前は魔王に殺されていただろうな。あいつの嫉妬とラスへの執着は並じゃない。…しばらくはその姿で居ろ。私の部屋を一緒に使わせてやってもいい」
『お前の部屋に?意味がわからん。俺はここでいい。早く立ち去れ』
グラース、燃える。
つれなくされると余計に燃え上がるタイプだった。