魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
首都ゴールドリバーに入ったラスは、なるべく顔が見えないように麦わら帽子を深く被って辺りをきょろきょろ見回した。
こことグリーンリバーはよく見れば街の構造がそっくりで、ルゥが乗ったベビーカーを押しながら手すりに脚を乗せてリラックスしているルゥに説明する。
「ルゥちゃん、ここはママの故郷なんだよ。ママはずーっとここで暮らしてたの」
「あぷう?」
「そうそう、ずっと。でもルゥちゃんには色んな世界を見せてあげるからね。ねえコー、こことグリーンリバーって似てるよね。そう思わない?」
「今ルゥがなんて言ったか分かったのか?すげえなおい」
コハクはあまり素性が知られていないので顔は隠さずむき出しのままだったため、以前結婚式を見たことのある者たちがどよめき出す。
だがコハクは彼らのそんな視線を無視してラスの肩をべったり抱きながら石造りの煉瓦の街並みを眺めた。
「だって俺ここを参考にしてグリーンリバーを作ったんだし。水辺で橋が多くて耐久性のある街にしたかったんだ」
「そうなの?なんか懐かしいなあってずっと思ってたの。でもこんな風にゆっくり街を歩くことができなかったから色々見て回ろうよ」
「その前に1度城に行った方がいいぜ。ソフィーが産気づいてたらどうすんだよ」
コハクに指摘されてはっとなったラスは、ルゥをさっと抱っこして足早にアーチ状の橋を渡る。
魔法でベビーカーを消したコハクがルゥに手を伸ばすとルゥも手を伸ばして掴まってきた。
その指の力がとても強くて、意地でも落ちるまいという決意に見えて、ルゥを抱っこする度に愛しさが込み上げてきたが――身が軽くなったラスがまたどんどん先を行ってしまい、それを見たルゥが悲しそうな声を上げたので急いで後を追う。
「ほんっとママは無鉄砲っていうか何も考えてねえっていうか…。困るんだよなー、お前もなんか言ってやってくれよ」
「ぷぅーっ!」
ルゥが大きな声を上げるとようやくラスの脚が止まり、その場でぴょんぴょん跳ねてコハクを急かす。
そうこうしている間にラスのことをよく知って愛していた街の者たちが大勢集まってしまって人垣ができると、ラスは皆に笑顔を振りまいた。
「あ、あの…ラス王女では…?」
「うん、私はラスだけど、もう王女じゃないよ。みんなと同じ。元気だった?変わりはない?」
皆が感動して歓声を上げた。
ラスが王国を去っても、彼女は皆の王女に変わりはなかった。
こことグリーンリバーはよく見れば街の構造がそっくりで、ルゥが乗ったベビーカーを押しながら手すりに脚を乗せてリラックスしているルゥに説明する。
「ルゥちゃん、ここはママの故郷なんだよ。ママはずーっとここで暮らしてたの」
「あぷう?」
「そうそう、ずっと。でもルゥちゃんには色んな世界を見せてあげるからね。ねえコー、こことグリーンリバーって似てるよね。そう思わない?」
「今ルゥがなんて言ったか分かったのか?すげえなおい」
コハクはあまり素性が知られていないので顔は隠さずむき出しのままだったため、以前結婚式を見たことのある者たちがどよめき出す。
だがコハクは彼らのそんな視線を無視してラスの肩をべったり抱きながら石造りの煉瓦の街並みを眺めた。
「だって俺ここを参考にしてグリーンリバーを作ったんだし。水辺で橋が多くて耐久性のある街にしたかったんだ」
「そうなの?なんか懐かしいなあってずっと思ってたの。でもこんな風にゆっくり街を歩くことができなかったから色々見て回ろうよ」
「その前に1度城に行った方がいいぜ。ソフィーが産気づいてたらどうすんだよ」
コハクに指摘されてはっとなったラスは、ルゥをさっと抱っこして足早にアーチ状の橋を渡る。
魔法でベビーカーを消したコハクがルゥに手を伸ばすとルゥも手を伸ばして掴まってきた。
その指の力がとても強くて、意地でも落ちるまいという決意に見えて、ルゥを抱っこする度に愛しさが込み上げてきたが――身が軽くなったラスがまたどんどん先を行ってしまい、それを見たルゥが悲しそうな声を上げたので急いで後を追う。
「ほんっとママは無鉄砲っていうか何も考えてねえっていうか…。困るんだよなー、お前もなんか言ってやってくれよ」
「ぷぅーっ!」
ルゥが大きな声を上げるとようやくラスの脚が止まり、その場でぴょんぴょん跳ねてコハクを急かす。
そうこうしている間にラスのことをよく知って愛していた街の者たちが大勢集まってしまって人垣ができると、ラスは皆に笑顔を振りまいた。
「あ、あの…ラス王女では…?」
「うん、私はラスだけど、もう王女じゃないよ。みんなと同じ。元気だった?変わりはない?」
皆が感動して歓声を上げた。
ラスが王国を去っても、彼女は皆の王女に変わりはなかった。