魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
王女だった頃のラスと街の者たちが接する機会は皆無に等しかった。
何せラスは何故か城から出て来なかったし、毎年描かれる肖像画を模写したものが出回り、それを見た人々はラスが美しく成長していることを知り、満足するしかなかったのだ。
だからこそ、ラスとこうして街を歩くことができるのは、彼らにとっては誉れだ。
またラスの夫となったコハクは得体の知れない男だったが、謎の街でもあり、地上の天国とも呼ばれているグリーンリバーの主ということがわかった。
…あまりにも顔が整いすぎているし、何ぶん…赤い瞳が不気味だったが、ラスが恋に落ちた男なのだから、きっと悪い男ではないと皆固く信じて疑っていなかった。
「…あれ?コー…お城の前に人だかりができてるよ」
「あー…もしかして間に合わなかった系かあ」
「え?何に間に合わなかった系?」
「ソフィーの出産。実は偵察飛ばしててさ、そろそろ産気づくことは知っててそれに合わせてシルフィードに急がせたんだけど…」
城の門の前には何百人もの人だかりができていたが、ラスの姿を見た者が声を上げ、そこからさざ波のように知られて人垣が割れた。
門の前に立っていた衛兵がラスを見るなり直立不動になり、すぐさま城から近衛兵が飛び出してくる。
「ラス王女!お帰りをお待ち申し上げておりました!」
「ただいま!お母様にそろそろ赤ちゃんが生まれるから帰って来たんだけど…もう生まれちゃった?」
「産気づいておられます。カイ陛下もお傍で見守っておられますので、お急ぎください!」
「大変!コー、急がなくちゃ!早く早く!」
コハクが抱っこしているルゥを見た人々は目尻を下げて喜んだ。
そしてこのゴールドストーン王国を継ぐであろう子が今、生まれるのだ。
「ついて来なくてもいいよ、わかるから!」
ラスがまたどんどん突っ走って行き、コハクは後からのろのろついて行きながら、すれ違う兵たちにルゥを見せびらかす。
ルゥは断然コハク似だったが、ラスが生んだという事実だけで彼らにとっては、それはどうでもいいことだ。
「今からお前の遊び相手が生まれるんだぞ。親戚になるんだから、何か困ったことがあったらお前が守ってやるんだ。いいな?」
「あぶぶ」
指をおしゃぶりしながらへにゃっと笑ったルゥに頬ずりしながら螺旋階段を上がり、王族と近衛兵しか入れないフロアに着くと、ソフィーの力む声が廊下に響き渡っていた。
廊下で立ち竦んでいたラスの瞳がみるみる潤む。
弟か妹の無事の誕生を願い、拳を握りしめていた。
何せラスは何故か城から出て来なかったし、毎年描かれる肖像画を模写したものが出回り、それを見た人々はラスが美しく成長していることを知り、満足するしかなかったのだ。
だからこそ、ラスとこうして街を歩くことができるのは、彼らにとっては誉れだ。
またラスの夫となったコハクは得体の知れない男だったが、謎の街でもあり、地上の天国とも呼ばれているグリーンリバーの主ということがわかった。
…あまりにも顔が整いすぎているし、何ぶん…赤い瞳が不気味だったが、ラスが恋に落ちた男なのだから、きっと悪い男ではないと皆固く信じて疑っていなかった。
「…あれ?コー…お城の前に人だかりができてるよ」
「あー…もしかして間に合わなかった系かあ」
「え?何に間に合わなかった系?」
「ソフィーの出産。実は偵察飛ばしててさ、そろそろ産気づくことは知っててそれに合わせてシルフィードに急がせたんだけど…」
城の門の前には何百人もの人だかりができていたが、ラスの姿を見た者が声を上げ、そこからさざ波のように知られて人垣が割れた。
門の前に立っていた衛兵がラスを見るなり直立不動になり、すぐさま城から近衛兵が飛び出してくる。
「ラス王女!お帰りをお待ち申し上げておりました!」
「ただいま!お母様にそろそろ赤ちゃんが生まれるから帰って来たんだけど…もう生まれちゃった?」
「産気づいておられます。カイ陛下もお傍で見守っておられますので、お急ぎください!」
「大変!コー、急がなくちゃ!早く早く!」
コハクが抱っこしているルゥを見た人々は目尻を下げて喜んだ。
そしてこのゴールドストーン王国を継ぐであろう子が今、生まれるのだ。
「ついて来なくてもいいよ、わかるから!」
ラスがまたどんどん突っ走って行き、コハクは後からのろのろついて行きながら、すれ違う兵たちにルゥを見せびらかす。
ルゥは断然コハク似だったが、ラスが生んだという事実だけで彼らにとっては、それはどうでもいいことだ。
「今からお前の遊び相手が生まれるんだぞ。親戚になるんだから、何か困ったことがあったらお前が守ってやるんだ。いいな?」
「あぶぶ」
指をおしゃぶりしながらへにゃっと笑ったルゥに頬ずりしながら螺旋階段を上がり、王族と近衛兵しか入れないフロアに着くと、ソフィーの力む声が廊下に響き渡っていた。
廊下で立ち竦んでいたラスの瞳がみるみる潤む。
弟か妹の無事の誕生を願い、拳を握りしめていた。