魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
ラスが自分のことで怒ってくれていることが純粋に嬉しかった。
ものすごく怒っているわけではないが、どこかどたどた音を立てて歩いているし、少し無口になる。
ラスが赤ちゃん以前の頃から知っているコハクは、ラス以上にラスのことを熟知していた。
「チビー、待てって。ルゥが泣きそうになってるぞ」
「…え?あ…ルゥちゃんごめんね、ママのとこにおいで」
ルゥは切り札だ。
母親になったラスは何にも優先してルゥのことを考えているので、ルゥが泣きそうな顔をしていると、先をずんずん歩いていたラスが小走りに戻って来た。
コハクは赤い瞳を緩めてラスの頭を撫でて、ルゥを抱っこしたラスをバルコニーに連れて行く。
「怒ってんだろ?俺のために?」
「お母様がごめんね。私とコーの結婚は許してくれたけど…根っ子の部分ではまだ完全には許してくれてないみたい」
「そりゃそうだろ、俺はあいつらをずっと苦しめてきたんだ。呪いなんかかけて。…チビにもこの城で16年間も閉じこめられて暮らさなきゃいけない目に遭わせたし」
「そんなことないよ!私は私でここの生活は楽しんでたし…。コーが居てくれたから平気だったの。リロイとコーが居なかったら私多分…生きながら死んでたから」
城の周囲は森で囲まれているため、残暑の蝉の鳴き声が響き渡る。
すぐに汗をかくルゥの額をハンカチでぬぐってやっていたラスを膝に乗せたコハクは、こうして想いを打ち明けてくれるラスを心から愛して抱きしめた。
細い身体は相変わらずだが、ラスにはどこかたくましさが備わった。
いつもはぽやぽやしているが、それでもルゥを守り抜かんとする決意は、ラスをさらに美しくさせていた。
「そっか。ま、チビのおかげで呪いは解けたけど、カイの奴はともかくソフィーに認めてもらうにはまだまだ時間がかかるなー」
「私たち死なないんだから時間は沢山あるよ。お母様が本当に許してくれるまで頑張ろうね」
――ラスとしては、ソフィーがこういう反応をすることは予想できていたが、やはり実際そんな姿を見せつけられると…悲しい。
いつかは笑い合いながら共に過ごすことができるように。
そして、ここへの用事はもう終わった。
「コー、行こっか」
「へ?今来たばっかじゃん。カイが悲しむぜ」
「もういいの。もう行こ。新婚旅行の続きしようよ」
新たな命の誕生を見届けて、城を出て行く。
ものすごく怒っているわけではないが、どこかどたどた音を立てて歩いているし、少し無口になる。
ラスが赤ちゃん以前の頃から知っているコハクは、ラス以上にラスのことを熟知していた。
「チビー、待てって。ルゥが泣きそうになってるぞ」
「…え?あ…ルゥちゃんごめんね、ママのとこにおいで」
ルゥは切り札だ。
母親になったラスは何にも優先してルゥのことを考えているので、ルゥが泣きそうな顔をしていると、先をずんずん歩いていたラスが小走りに戻って来た。
コハクは赤い瞳を緩めてラスの頭を撫でて、ルゥを抱っこしたラスをバルコニーに連れて行く。
「怒ってんだろ?俺のために?」
「お母様がごめんね。私とコーの結婚は許してくれたけど…根っ子の部分ではまだ完全には許してくれてないみたい」
「そりゃそうだろ、俺はあいつらをずっと苦しめてきたんだ。呪いなんかかけて。…チビにもこの城で16年間も閉じこめられて暮らさなきゃいけない目に遭わせたし」
「そんなことないよ!私は私でここの生活は楽しんでたし…。コーが居てくれたから平気だったの。リロイとコーが居なかったら私多分…生きながら死んでたから」
城の周囲は森で囲まれているため、残暑の蝉の鳴き声が響き渡る。
すぐに汗をかくルゥの額をハンカチでぬぐってやっていたラスを膝に乗せたコハクは、こうして想いを打ち明けてくれるラスを心から愛して抱きしめた。
細い身体は相変わらずだが、ラスにはどこかたくましさが備わった。
いつもはぽやぽやしているが、それでもルゥを守り抜かんとする決意は、ラスをさらに美しくさせていた。
「そっか。ま、チビのおかげで呪いは解けたけど、カイの奴はともかくソフィーに認めてもらうにはまだまだ時間がかかるなー」
「私たち死なないんだから時間は沢山あるよ。お母様が本当に許してくれるまで頑張ろうね」
――ラスとしては、ソフィーがこういう反応をすることは予想できていたが、やはり実際そんな姿を見せつけられると…悲しい。
いつかは笑い合いながら共に過ごすことができるように。
そして、ここへの用事はもう終わった。
「コー、行こっか」
「へ?今来たばっかじゃん。カイが悲しむぜ」
「もういいの。もう行こ。新婚旅行の続きしようよ」
新たな命の誕生を見届けて、城を出て行く。