魔王と王女の物語③-Boy meets girl-【完】
何の観光資源もなく、漁業だけが盛んな港町に着いたラスたちは…早速悪目立ちしていた。
ここにラスが喜びそうなものが何もないことを知っているコハクは、不躾な視線でじろじろ見つめてくることに少し違和感を覚えていた。
こういう風に見られることは慣れていたが…どこか何かが違う。
目が合うと怯えるようにしてそそくさとその場を立ち去る港町の住人たち――
…田舎には、赤い瞳を持つ者は不吉とされて殺されることも多い。
コハクもそうなりかけたが、運よくローズマリーに拾われて魔法使いとして生きてゆくことができた珍しいパターンだ。
「コー、大丈夫?嫌な思いしてない?」
「へ?ああ、へーき。なんかちょっとここの奴らが俺を知ってるような気がしただけ」
「ふうん?コーはここに来たことがあるの?」
「ねえけど、だから違和感があるんだ。なんなんだこいつら。チビ、とっととソリを借りてホルンに行こうぜ」
ラスも彼らが妙にコハクを気にすることに気付いていた。
確かにコハクの瞳の色は珍しいし、赤は不吉の象徴とされているので不気味がって近寄ってくるものは少ない。
だが共通しているのは――皆がコハクを知っている風なこと。
ひそひそと言葉を交わしては大きな山を見上げて、またコハクに視線を戻すのだ。
コハクではなくラスの方が嫌な思いになりそうになり、すやすや眠っているルゥを抱っこし直すと、すぐ傍で興味津々にこちらを見ていた少年に声をかけた。
「山の上のホルンに行きたいんだけど、ソリを借りたいの。どこで借りれるのか教えてもらえる?」
「え、知らないの?」
「え…?」
ラスに声をかけられた少年はラスに見惚れながらも隣に立っていたコハクをちらちら盗み見しては距離を取り、山の入り口にあたる場所にある小屋を指してその場から逃げ去った。
「なんなの?コー、何か変だね」
異界の風も件もあるので、妙な現象を放っておくわけにはいかない。
コハクはラスの肩を抱いて山の入り口に向かい、瞳を険しく光らせた。
ここにラスが喜びそうなものが何もないことを知っているコハクは、不躾な視線でじろじろ見つめてくることに少し違和感を覚えていた。
こういう風に見られることは慣れていたが…どこか何かが違う。
目が合うと怯えるようにしてそそくさとその場を立ち去る港町の住人たち――
…田舎には、赤い瞳を持つ者は不吉とされて殺されることも多い。
コハクもそうなりかけたが、運よくローズマリーに拾われて魔法使いとして生きてゆくことができた珍しいパターンだ。
「コー、大丈夫?嫌な思いしてない?」
「へ?ああ、へーき。なんかちょっとここの奴らが俺を知ってるような気がしただけ」
「ふうん?コーはここに来たことがあるの?」
「ねえけど、だから違和感があるんだ。なんなんだこいつら。チビ、とっととソリを借りてホルンに行こうぜ」
ラスも彼らが妙にコハクを気にすることに気付いていた。
確かにコハクの瞳の色は珍しいし、赤は不吉の象徴とされているので不気味がって近寄ってくるものは少ない。
だが共通しているのは――皆がコハクを知っている風なこと。
ひそひそと言葉を交わしては大きな山を見上げて、またコハクに視線を戻すのだ。
コハクではなくラスの方が嫌な思いになりそうになり、すやすや眠っているルゥを抱っこし直すと、すぐ傍で興味津々にこちらを見ていた少年に声をかけた。
「山の上のホルンに行きたいんだけど、ソリを借りたいの。どこで借りれるのか教えてもらえる?」
「え、知らないの?」
「え…?」
ラスに声をかけられた少年はラスに見惚れながらも隣に立っていたコハクをちらちら盗み見しては距離を取り、山の入り口にあたる場所にある小屋を指してその場から逃げ去った。
「なんなの?コー、何か変だね」
異界の風も件もあるので、妙な現象を放っておくわけにはいかない。
コハクはラスの肩を抱いて山の入り口に向かい、瞳を険しく光らせた。